上関)計画は国により見直しされるのが妥当、という意見書が届きました
2011/01/12
「上関原発計画の根っこを見る会」 からの 意見書が届きました。まず、執筆者
のご挨拶と、それに引き続き本文を掲載いたします。 掲載者 安渓 遊地
以下引用。
ごあいさつ
きょうもニュースで埋立作業が出来なかったと、報道していました。
ご苦労様と思います。(1月11日)
今朝は、県が関係市町に対する原発関連の交付金の手続きに入ると報道しました。
「設置許可」が下りていませんよね。
このような交付金はどの段階で手続きに入るのが本来の姿なのでしょう。
それで、暮から年初にかけて考え続け、到達した所を皆さんと共有したいと、送信さ
せて頂きます。
「公有水面埋立免許願書」の不備についてまとめ、その内、「計画地選定の理由」に
地質条件が挙げられていることに疑問を持ちました。
理由の情報がとても希薄なことから、県議さんが県議会で質問されました「県は選定
理由をどのように納得されたか」と。
答弁は「『電源開発基本計画』に組み入れられる審議会で検討済みである。」という
ものでした。
しかし、その審議会の議事録には、地質のことなど一切出て来ません。
虚偽答弁であったわけです。
県議会で虚偽答弁を許してしまう『電源開発基本計画』とは、一体何なのか?
それが、考え続けていたことの内容です。
『電源開発基本計画』に組み入れられたことが、矛盾を孕んだまま、強行に進行して
行く、上関原発問題の手続き上の出発点になったことは事実です。
もちろん、それまで、着々と地ならしが行われていたわけですけれど。
上関原発計画の必要性の最も大きな根拠にされたのは、需要計画としての、「最大電
力」です。
これ自体がすでに破たんしているのも分かります。
なぜ「強行」という手段を取っているのかも。
どうぞ、共有してやってください。
考えてきたことを、以下に述べさせてください。
メンバーの方の中に、チェックにご協力くださった方もあり、出来あがったもので
す。
よろしくお願いいたします。
「電源開発基本計画」の意味
あらかじめ民主主義が拒否されている仕組み
上関原発計画の根っこを見る会
上関原発計画の取り止めを望んで活動していると、とても奇妙な現実に直面します。
何を取っても、ここ上関町長島田ノ浦に原発を造る妥当性が見当たらないのに、計画
だけが進捗して行きます。
せいぜい長く見積もっても60年しか使えない原発なのです。
それなのに・・・。最もふさわしくない所と思われる場所に。なぜ?
直面するのは次のような現実です。
「こんなに豊かな自然を壊してまで、なぜ造らなければならないのか。
いくつもの学会を挙げて、理を尽くして、長年ここに原発を立地する不当性を訴え続
けているではないか。それなのになぜ?」
「祝島の人たちは、豊かな海の恵みをこのままに、これまで通りの暮らしを続けたい
と、『補償金では海を売れない』と言って、長年、根気強く同じ姿勢を貫いておられ
るではないか。
最近は、エネルギーの自立を目指した計画もあると聞く。これからの暮らしのあり方・
未来への提言を指し示すかに見えるその人たちを犠牲にしてまでなぜ?」
「これらの不当性と、不当であるがゆえの計画進捗のための無理について、司法の場
で公平な判断を仰ぎたいと裁判所に提訴しても、ほとんどが、納得のいく判決になら
ない。」
これらの疑問の前に立ちはだかるのが「電源開発基本計画」ではないのか?
最初に「電源開発基本計画」という言葉の威力を思い知らされたのは、県が中国電力
に、「公有水面埋立免許」を与えた時でした。
山口県知事が記者会見をした発言の中に、『「詳細調査中」でも、「設置許可」が下
りていなくても、埋立免許を出すことができるのは、「電源開発基本計画」に組み入
れられているからです。」とありました。
誰もが不思議にも理不尽にも思う事態に対して、抵抗する術を奪うことに根拠がある
ということになります。「電源開発基本計画」の不気味さと表現してもいい実態を知っ
た最初でした。
ついで、「電源開発基本計画」について驚愕するような事実を知ることになるのは、
県議会本会議での、「県の答弁の内容」に触れた時でした。
中国電力が「公有水面埋立免許願書」に述べている[現地の地質地盤が原子力発電に
対して適格地である]からこの地を選んだという、「計画地選定の理由」が希薄であ
ることに、「県としてはどのように納得したのか」と尋ねる県議に対して、答弁は「
それらのことは『電源開発基本計画』に組み入れる電調審の会議で審査済みです。」
というものでした。
ところが、この会議の議事録を見ると、地質や地盤についての審議は一言もないもの
でした。これでは、県議会で虚偽答弁があったことになります。
県議会は、県民に事実を説明する場であるはずです。県民が納得するために言葉を尽
くすべき場であるはずです。ここで虚偽の答弁が許されてしまうのが「電源開発基本
計画」であるとするならば、それは超法規的なものとして存在し、あらかじめ民主主
義が排除されていることになります。
では、「電源開発基本計画」とはどういうものなのでしょうか。
検索すると[平成13年度電源開発基本計画(案)について]
という書面が表われます。
この年は、上関原発計画を「電源開発基本計画」に組み入れた年になっており、また、
新
規着手地点となったのは上関のみなのが分かります。
1.電力の供給
この計画案で最初に取り上げられるのが、電力の需要であり、それをいかに供給する
かと
いうことであり、それが数値で示されています。
平成12年度 平成22年度(予測) 平成22
年度(実際)
需要電力量 約8,379憶kWh 約9,678憶kWh 約8,756億k
Wh
最大電力 約1憶6,985万kW 約1憶9,955万kW 約1憶6,9
55kW
この内、最大電力の供給を図るための供給計画になっています。
問題は、この計画案の最後を締めくくる言葉です。次のようになっています。
「今後、電源開発基本計画に組み入れられれば、上記1地点は今後着工に向け所要の
手続きが進められることになる。」と。
計画に組み入れられるということが、まるで呪縛のようになるのだと分かります。
それならば、この計画に組み入れることは、とても慎重に審議されなければなりませ
んが、
審議するのは「電源開発調整審議会」(「電調審」当時総理府)です。
2.何が審査されるのか。次のような内容だと記述されています。
一般に、電源開発を行うに当たっては、かんがい、漁業、治水、発電等による水利
権の調整、家屋の水没に対する損失補償、漁業補償などの複雑な問題がある。
こうした問題に関して、関係省庁間の調整、第1次公開ヒアリング(原子力発電のみ)
、環境調査、用地取得・漁業補償、立地都道府県知事の同意を得た後に電調審に上程
して電源開発基本計画への組み込みを決定する。(略)
このように電源開発促進法の下では、各年度の新規立地計画は、1)地元都道府県の同
意を得ること2)基本的に関係漁協の同意が得られていること3)関係省庁の合意を得
ることなどの要件を満たした上で、電調審に付議し、電調審は国土の総合的な開発利
用および保全、電力の需給その他電源開発の円滑な実施をはかるため必要な事項を考
慮し、電源開発基本計画を決定することとなっていた。(2006年度以降制度の変
更があったため過去形)
注)1.漁業補償の支払いは2000年5月。
注)2.知事の同意・電源開発基本計画組み入れは2001年
注)3.この時、神社地は未取得のままであった。すなわち、用地取得はできていな
かったことになる。中国電力が神社地を取得したのは2004年のことである。
「電源開発基本計画」の問題点
1.電力供給が最も大きな開発目的になっている。
*その数値は正しいかどうか(現在の訂正分を一覧表右端に入れています)
*発電源の設定は正しいかどうか
原子力発電の核の威力の内、エネルギーの取り出しのみが強調されるが、制御の困
難な放射能の負の要素への配慮が全くないことは、エネルギー政策としては欠陥政
策と言ってもいいのではないか。
*原子力発電に伴う「核のゴミ」についての目配りが全くない計画は、国の計画と
し
ては成り立たないものではないだろうか。
上関原発計画が「電源開発基本計画」に組み入れられるに際しての問題点
2.電調審での審議は慎重に進められているのかどうか。
*用地取得が済んでいない状態で計画に組み入れられた。
*環境調査についての審査は、十分に尽くされてはいない。
1)動・植物プランクトン、卵、稚仔について、磯・砂浜の調査が終わってい
ない。
2)埋め立てる湾での地質調査の情報は、公開されていない。
*計画に組み入れられると「今後着工に向け所要の手続きが進められることになる」
と言うのであれば、計画段階の審議に十分な時間と労力が必要であったのではないか。
その後の立地へ向けての中国電力のゴリ押しに、地元住民は苦労することになります。
ずさんな「電調審」の審査結果で「電源開発基本計画」に組み入れられたために、上
関原発計画では数々の、中国電力と県によるゴリ押しをみることになる。
計画に組み入れることにより、「円滑に進めることができる」という、その「円滑」
とは、以下の不合理な手続きを伴わざるを得ないこととなったのです。
*「電源開発基本計画」への組み入れの正当な根拠となったのは、「知事の同意」
と8漁協への補償だけ。その他の条件では組み入れが妥当かどうか深く考慮されてい
ない。
*立地環境調査(1994~1996年に調査)で分かったはずの田ノ浦湾の地質
情報は電調審前には提出されていない。
*神社地の取得方法(ニセの退職願を使用する。裁判所もニセであることを認める。
)
*「設置許可」も下りていないのに「埋立免許」を付与する。
*祝島の人々の、長年の暮らしをかけた訴えに耳を貸そうとしない。
*「瀬戸内海環境保全特別措置法」第十三条の無視(埋立条項)
*田ノ浦湾を中心とする、一帯の自然の素晴らしさと多様性を指摘し、それが世界
の人々の意識まで動かしているのに、一向に顧みようとしない。
*県民の意見を聞こうとしなくなった県の態度。
*書面も整っていないのに「設置許可申請書」を国に提出し、国は受理してしまう。
(115本のボーリングの内、地質柱状図は8本しかなく、国への提出ももちろん無
い。
続く選挙に向けたスケジュールであったと思われる。)
*「設置許可」も下りていないのに、地域を小分けにして選挙前の原発説明会。設
置できるかどうか不明のはず。何を説明したのか。その結果7割の原発賛成票を得た
というが、原発のデメリットの説明があったとは思えない。
*中国電力による上関町への多額の寄付(原発への無理な誘導)
*意見が届けられないために、抵抗で示すしかない市民に対して、「問答無用」を
貫こうとする。
*原発問題は未来の人々、広域な人々を巻き添えにするにもかかわらず、問題を地
元に特化しようとし、市民として活動している人の排除を企てる。
*不思議なことに、原発敷地でもある田ノ浦湾の、地質に関する情報は、現在も無
いに等しい。
*温排水拡散の1℃上昇範囲算定の指針は、それが所管官庁にも残っていない旧い
ものを使っている。
電力供給の根拠として使われた最大電力についての数値は、実際には平成22年度現
在のデータでは、当初計画を下回っているのです。
従って、新規の電源開発は不必要と言うことになります。
「電調審の審査」というスタート時点での杜撰な審査をも併せ考えると、「上関原発
計画」は、国により見直しされるのが妥当と考えます。
素晴らしい景観、生き物の楽園、人間にとっては食べ物の供給源ともなる海。
この田ノ浦に、「寿命60年で廃炉。後には死んだ海が残るだけ」と言う原発計画は
何と愚かであることか。
国による見直しを切に求めたいと思います。