人工放射性核種の危険性)ドイツの小児白血病の場合
2010/12/29
ドイツの許容量0.3ミリシーベルト/年をはるかに下回る0.00009から0.0003200ミリ
シーベルトでの間なのに原発周辺のガンの危険性が高い。
「南ドイツ新聞」http://www.priee.org/modules/pico2/index.php?content_id=12
から抜粋
1980年~2003年の間に1592人のガンにかかった子どもたちに対して、4735人の健康
な子どもたちを検査対象グループとし、比較をつき合わせた。比較対象グループは、
同じ時期(1980~2003年)に同じ場所で育った子どもたちである。“Fall‐Controll
‐ Studie”と呼ばれるこの調査方法は取り分け信頼がおけると考えられている。
子どもたちが原子炉に近ければ近いほどガンにかかるリスクは高く遠ければ遠いほ
どリスクは少ない。でも、ガンにかかる率が高くなったことに対しての責任が原発に
あるとは言えない。というのは、放射線の量が医学的にみて低すぎるから。
現在の科学のレベルでは、この結果は放射線生物学の観点からは説明できないので放
射線の量との関連性に関しては証明はできていない。
しかし、原発との近ければ近いほどリスクが高いという関連性は証明された。しか
も今回の結果は、クリューメルのような1カ所で沢山の白血病が発生したのではなく、
全ての原発立地地区でこの結果がでたことである。
調査の確実性
この調査の名称はKiKK「原発周辺での子どものガン」である(“Kinderkrebs in d
er Umgebung von Kernkraftwerken”)。調査の対象は、1980年~2003年の間の5才以
下の子どもがガンにかかる原発周辺の市町村で調査、16基41市町村。ここでは5才以
下の1592人の子どもがガンになり、その中の593人が白血病である。この時の比較対
象となった4735人の子どもたちは同じ年頃、同じ男女比でしかも原発周辺地域の健康
な子どもたちである。この比較グループは原発以外でのガンにかかる原因を調べるた
めにつくられた。
この調査研究の確かさの1つは25mのメッシュであることである。ドイツでは1980
年~2003年の間に13373人の子が5才以下でガンにかかった。そのうち29人の子は原発
の5 km 以内に住んでいることでガンになったといえる。1年に1、2人のケースである。
5893人の白血病のケースでいえば、その中の20人の子どもが5km以内に住んでいるこ
とによってかかった。これは1年に0.8ケースとなる。そうなると16の原発周辺地域の
5 km 以内で37名の白血病のケースが実際にあったので、統計的平均は17名であった
から、この結果は、ドイツでは明らかに原発周辺との関連が有ると言えることが判っ
た。
どれ位の放射線量があったか?
ドイツの核施設周辺での許容量は0.3ミリシーベルト/年。実際の汚染はこれより
も低い。5 km 周辺の50才の人は、0.00009から0.0003200ミリシーベルトの間であっ
た。自然界の放射線は、1.4ミリシーベルトであり医学の放射線は1.8ミリシーベルト
である。
←人工放射性核種が生物体内で濃縮されることによるヒバク(市川定夫先生)
http://www2.gol.com/users/amsmith/koen.html#Anchor121840
それともう一つ重要なことは、原子力が産み出す放射性核種の圧倒的大部分が人工
放射性核種であることです。つまり自然界には存在しない放射性の原子核ができます
が、それは人工放射性核種と呼ばれます。人工放射性核種がもたらす放射線被曝の特
異性が問題なのです。天然には放射性核種が存在しない元素につくり出された人工放
射性核種が特に問題です。なぜかというと、生物は、放射性のない元素は安全ですか
ら、その元素を積極的に取り込んで、有効に活用する性質を獲得してきました。その
一つの典型的な例がヨウ素です。私たちは、原発の周辺でムラサキツユクサを植える
実験をしました。その実験はアメリカや西ドイツでも行われましたが、どの原発の周
辺でも同じく起こったのは、ムラサキツユクサの突然変異率が増えるということでし
た。空間線量を計ってもほとんど増えていない、ところがムラサキツユクサは、統計
学的に見てあきらかに有意に突然変異率が増えるのです。誰がやっても、どこでやっ
ても突然変異率が増えるのです。その一番大きな原因がヨウ素でした。天然のヨウ素
は非放射性で、放射性をもつヨウ素は自然界には存在しません。ところが原子炉のな
かでつくり出されるヨウ素は100%放射性です。まったく対照的なのです。
生物は海のなかで誕生しました。原始的な生命が誕生したのは約35億年前で、はっ
きり細胞の形をもって生物らしくなったのは、約25億年前です。そのときは現在のよ
うな大気圏も酸素もまだなかったのです。海のなかで生まれた生物は無機的な生活を
していたのですが、やがてそれが進化して、現在のラン藻の祖先、単細胞の下等な藻
類が生まれて光合成を始めました。その当時、地球上にたくさんあった二酸化炭素と
水から太陽のエネルギーを利用して光合成をし、有機物、炭水化物をつくり出しはじ
め、酸素が放出されました。酸素はまず海のなかに溶け、やがて大気に出はじめ、酸
素を含む大気圏が形成され、生物は陸上に進出することが可能となりました。陸上に
上がった生物にとって問題はヨウ素でした。海のなかにはヨウ素はたくさんありまし
た。しかし、陸上では、ヨウ素は海から蒸発して風で運ばれてきて、雨に溶けて降っ
たとしても、川となって海に流れていきます。だから陸上にはヨウ素は非常に少ない。
かつて日本軍が大陸に侵攻した当初の頃、ヨウ素欠乏症に悩まされたのです。それで
その後は、塩昆布やワカメなどを持たせました。海藻類にたくさんヨウ素が入ってい
るからです。
植物は根を張りますと動けませんから、植物のほうがヨウ素を濃縮する能力をもち
はじめます。空気中に含まれるごく僅かなヨウ素を、自分の体に必要な量まで濃縮す
る能力をもちはじめました。10億年も前から濃縮する能力は年とともに高まって、>現在の高等植物は、調査データによりますと、250万倍から1,000万倍ですが、何百
万倍にも空気中から植物体内にヨウ素を濃縮できます。それで原発周辺のムラサ
キツユクサは、体内に放射性ヨウ素をどんどん濃縮して、体内から被曝を受けたので
す。
普通の原発では、希ガスと言って、クリプトン85だとかキセノン133やキセノン135
という,化学的な反応力の全くない不活性気体が放出されますが、その仲間と比べて
原発の気体廃棄物として出されるヨウ素は、ムラサキツユクサの実験をした当時、だ
いたい1万分の1でした。現在は活性炭フィルターが付けられて10万分の1に減ってい
ます。それでも希ガスと比べて1万分の1とか10万分の1くらいのものが出るのです。
希ガスは不活性気体で、化学反応をしませんので、空気中と植物の体のなかの濃度は
同じなのです。ところが放射性ヨウ素だけは空気中には1しかないのに、例えば500
万倍濃縮されるとすれば、放出量は希ガスの1万分の1だとしても、植物体内では希
ガスの500倍になります。
それで原発の周辺のムラサキツユクサの突然変異が増えるということが証明された
のです。植物は濃縮できる能力を獲得したからこそ、必要なヨウ素を集めることがで
きたのです。動物は植物を食べることによって、また肉食動物は草食動物を食べるこ
とによってヨウ素を摂取できます。そしてそのヨウ素を哺乳類ですと甲状腺に集めま
す。そして甲状腺に集める速さは若い人ほど速い。一般的に言いますと成人に比べて、
10歳ぐらいの子どもで10倍ぐらいの速さです。乳児は10歳ぐらいの子どもの8倍ぐら
いの速さです。ですからわれわれに比べて乳児は80倍ぐらいの速さでヨウ素を集めま
す。なぜならば、ヨウ素は、体を成長させる成長ホルモンを甲状腺でつくるのに必要
なのです。それで甲状腺にヨウ素を集めて成長ホルモンをつくって成長させるのです。
だから若い人ほど集めるのが速いのです。例外は女の人で、妊娠中には自分の甲状腺
よりも、むしろ胎盤を通じて胎児の甲状腺に集めます。特に妊娠中期を過ぎた頃から、
さかんに胎児の甲状腺にヨウ素を集め、胎児の成長ホルモンをつくらせるのです。も
う一つの例外は授乳期間です。赤ちゃんを産んでお乳を与えている間、母体の甲状腺
にはあまり送らないで、ほとんど乳腺に集めます。そしてお乳に入って赤ちゃんに行
くのです。全部、若者、若い者優先のシステムになっています。つまり若い人ほど、
成長ホルモンを必要とし、そのためのヨウ素を必要とするのです。つまり陸上には少
ないヨウ素に植物も動物もみごとに適応しているわけです。
ところが、原子炉が産み出すヨウ素はすべて放射性です。自然の非放射性のヨウ素
に適応した生物の優れたシステムは、人間が放射性のヨウ素をつくり出したことによっ
て、たちまち悲しい宿命となり、人工放射性ヨウ素を体内や甲状腺、胎児や乳児に著
しく濃縮して、至近距離からの大きな体内被曝を受けることになってしまいます。そ
の他、ヨウ素と同じような働きをするのは、自然界の元素には放射性のものがないも
ので、骨や歯、卵殻に選択的に沈着するストロンチウム90もそうですし、筋肉や生殖
腺に蓄積するセシウム134や137もそうです。ストロンチウムはカルシウムの代りにな
ります。