原発ルポ)漁民解体――岩内郡漁協と原発計画(平田剛士)
2010/12/21
ゆえあって、スケトウダラと温排水の関係をしらべていたら、こんなルポがあること
を知りました。
漁民解体――岩内郡漁協と原発計画――
平田剛士
http://attic.neophilia.co.jp/aozora/zipfiles/gyominkaitai.zip からダウンロードできます。
HTML版もあります。http://attic.neophilia.co.jp/aozora/htmlban/gyominkaitai.html
以下はほんの一部の 抜粋です。「全員で雲隠れ」というところがおもしろいです。
原発反対決議の採決はスムーズにいったんですか、と私は尋ねた。岡本さんはニヤ
リとして言う。
「いやあ、緩(ユル)くなかったね。まあ、小さな議会だから、だれが賛成でだれが
反対か、採決の前に見通しはついてるわけでしょ。あのときは、漁業と、社会党と共
産党と、あと革新無所属は原発に反対だったのさ。自民と、保守系無所属が原発賛成
でね。でも数はぎりぎりで、どっちに転ぶかは、公明党が握ってたんだな。公明党は、
いっつも玉虫色なんだ」
町議会に公明党議員は一人だったが、賛成か反対か、彼だけが最後まで態度を明ら
かにしていなかった。そこで、岡本さんたち「反対する議員懇談会」のメンバーは、
一計を案じた。
「全員で雲隠れしたんだ。アハハ。前の日の日曜の晩からニセコの温泉に行って、そ
の公明党の議員も一緒に缶詰にしちゃった。直前に相手に圧力かけられたら大変だか
ら」
先手を打ったというわけだ。翌日、本会議の開会時間ぎりぎりに戻ってみると、案
の定、議場の入り口の前に役場の幹部や北海道電力の関係者が待ち構えていて、「最
後の説得」を仕掛けてきたという。でも、反対派の議員たちは無言のまま、議場に滑
り込んだ。
本会議は、午前一〇時一二分に開会宣言された。宣言したのは岩内郡漁協前組合長
の宮下佐一議長で、二四議員全員が出席した。議題は原発反対決議案ただひとつだけ
である。
しかし、議事進行は遅れに遅れ、最後の採決が行われたときはすでに夜更けだった。
「原発設置反対」に反対する会派が採決に激しく抵抗したためだが、無記名投票の
結果は、
賛成一二、反対一一、白票なし
というものだった(議長には投票権がない)。。
わずか一票差での可決。
「やっぱり最後の一人がモノを言ったんです。あの時は、ある議員のところには、実
弾(現金)が飛んだっていう話とか、聞こえてきてたしね。もう確かめようもない噂
なんだけど。最後まで安心はできなかったですね」
岡本さんは、そう明かした。