発言するのは科学者の義務)シラードたちが書いた「フランク・レポート」
2010/12/14
http://www.inaco.co.jp/isaac/shiryo/flanc_report.htm からの引用(冒頭部分の一部のみ)です。(出だしの一文の中で、「置いて」を「おいて」に修正しました。)
原文はhttp://www.dannen.com/decision/franck.html で読めますが、
SECRET に分類されています。
フランク・レポートは1945年6月11日、シカゴ大学冶金工学研究所の科学者
たちが、原子爆弾の完成を目前にして、「原爆の使用」に深い憂慮を抱き、陸軍長官
スティムソンにあてて提出した「警告と勧告の書」である。報告書のタイトルが「政
治ならびに社会問題に関する委員会報告」となっているように内容は、科学理論や工
学的なものではなく、日本に対する原爆の使用は、必然的に核競争を招来するとした
警告の書である。
<フランク・レポート>
政治ならびに社会問題
Ⅰ. 緒言
物理学の分野において原子力(nuclear power)を特殊なものとして扱わなければ
ならぬ、たった一つの理由は、その平和に及ぼす政治的圧力の手段として、あるいは
戦争において瞬時に破壊をもたらす手段として、それがとてつもない可能性を持って
いる点である。原子工学の分野における研究機構、科学的開発や一般産業界における
開発機構、あるいはその発表や広報に関する現在の全ての計画は、当然そう運営され
るべきものとして、政治的かつ軍事的環境によってしつらえられている。従って、原
子工学の戦後における機構についてなにか意見を述べること自体、不可避的に政治問
題に論究することとなる。この大規模計画に関与する科学者は、国内政策であれ国際
政策であれ、問題に関して発言してはならないものと措定されている。しかしながら
われわれは同時に、過去5年間この国の安全にとってまた世界の全ての国々の将来に
とって、容易ならざる危険が存在することを知りうるひとつの小さな市民グループで
もあった。しかもわれわれを除くその他の人類はこの危険を知らないのだ。それ故に、
ことの重大さに鑑み、原子力に関して熟知している立場から想起せらるる政治的諸課
題に注意を喚起し、なさるべき決定のための準備や研究へ向けてそのステップを示す
ことはむしろわれわれの義務であると感ずるに至った。原子工学のあらゆる観点から
問題を取り扱う、暫定委員会が創設されたことによって、政府がこうした意味合いま
でも認識するようになることを望んでいる。われわれは、状況の科学面からの諸要素
を熟知しており、また世界レベルでの「政治的意味合い」についても長期にわたって
深く関わってきた。従って、これらゆゆしき諸問題の可能な解決策に関し、暫定委員
会に一定の勧告を行う義務を負う、と感じている。