映画『祝の島』を見て11)はなぶさ・あや 監督への手紙
2010/08/14
最後は、纐纈あや監督へのお礼の言葉などです。これで、このシリーズはとりあえ
ず終了します。
◎纐纈あや監督への手紙
祝島を知ったのは、安渓先生の環境問題の授業を受けてからです。幼少時に6年間
山口に、その後は広島や他県に住んでいましたが、上関町を知ったのも大学に入学し
てからでした。原発についても同じです。家に帰っていつものように電気をつけたと
き、「この電気はどこで、どうやって、誰が作ったんだろう?」……初めて考えまし
た。何とも言えない感情……恥ずかしさ?悲しさ?わかりません。
祝島に生きる人たちは、島の伝統を守るために原発に反対しているのではないと感
じました。伝統が云々と言うより、自分、家族、島の人たち、そして未来の子孫の生
活を大切にしたいという思いが強いために、当たり前のように反対を貫いているのだ
と私は思いました。
1時間半くらいでしょうか?その短い映画で、祝島に行ったことのない私にも、海
岸のにおいや田んぼ、漁の風景、祭りなどが頭の中に浮かんできました。人との結び
つきを大切に、自然の流れに任せて生活を送っている祝島の人たちを、羨ましく思い
ます。とはいえ、もしも祝島に住むことになったら……正直に言うと不安です。ビル
に囲まれた生活を知ってしまったので、いつでも誘惑と隣り合わせだからです。でも、
それでもいいと私は思います。祝島には住んでいなくても、ここから島について考え
ることはできます。新聞やテレビで知ることもできます。色々な情報に振り回されな
がらも、祝島の人たちのように、自然と生活のためにまっすぐな生き方でありたいで
す。
◎纐纈あや様
初めてお手紙差し上げます。梅雨明けの待たれる今日この頃、纐纈様にはますます
ご健勝のこととお慶び申し上げます。
先日、纐纈さんの映画『祝の島』を大学の講義で鑑賞させていただきました。普段、
ドキュメンタリーの映画はめったに観ないのですが、とてもいい映画で心に響きまし
た。この映画を観る前に祝島のことについて少し勉強しました。私は、山口に来るま
では祝島のことは知らなかったし、原発建設が問題になっていることも知りませんで
したが、実際の祝島の人びとの生活や色んな行動を目にして、祝島に行ってみたいと
いう思いが生まれました。きっと、文字だけで祝島のことを勉強していたなら、感心
するくらいで終わっていたと思います。
私は、祝島のように自然に囲まれていて、おじいちゃんおばあちゃんばかりで、人
と人とのつながりが深いところに住むのが昔からの夢です。美しい自然と海、人びと
同士の深いつながり、こういったものは今の私たちに欠けており、必要なものだと思
います。原発建設によって、長年培ってきたこういったものが簡単に壊れてしまいま
す。壊すことは簡単です。でも、守ること・作ることは大変なことです。「よう来て
くれたなあ」と魚を釣るおじいちゃんも皆で集まっての夜のお茶会も、一人ひとりの
生活を原発という勝手な都合で壊していいはずがない。でも、法律は祝島の人びとを
守ってはくれない。ただ海を守りたいだけなのに、調査の妨害は法律違反だと言われ
る。法律は誰のためにあるのかというもどかしさを感じました。
祝島の自然を、そして人びとを守っていきたい、そう感じました。私に出来ること
はちっぽけです。声をあげることしかできないかもしれません。でも、それをすれば
何か変わるかもしれないと思います。まずは、夏休みに祝島を訪れてみようと思いま
す。そして、このことをもっとたくさんの人に知ってもらいたいです。
夏風邪には気をつけて、ご自愛なさってください。ご健勝とご活躍をお祈り申し上
げます。
敬具
平成22年7月7日
◎映画「祝の島」を見ました!
纐纈 あや様 様
突然のお手紙を差し上げる失礼をどうぞお許しください。
私は、山口県立大学の学生、◎◎◎◎と申します。
私が受講している「環境問題」という講義で、「祝の島」の映画を見る機会があり
ました。
私は、その映画を見て、上関町祝島の現実を理解することができました。そして、こ
のような映画を撮影した纐纈あや監督に感想を述べたくメールをいたしました。
私は、この「祝の島」という映画を見て、祝島に原発は必要なのか?という問いを
考えました。祝島の人びとは海に感謝し、生活しているからこそ源発を立てることに
反対なのです。
原発を立てるのではなく、自然の力でエネルギーを作ることはできないでしょうか。
例えば風力発電や、波力発電などです。
纐纈あや監督は、撮影を通じて祝島は今後どのようにしていくべきだとお考えなの
でしょうか?
もしよろしかったら、お返事ください。
◎『祝の島』の制作者の方々へ
私は県外に住んでいて大学に入学してから山口に住み始め、上関原発の事を知った
のは「環境問題」の講義を受講した3年生になってからでした。それまで山口県に原
発をつくるという計画があること自体も知らず、ましてや行政、電力会社、住民の中
でどのようなことがあったのか、現在何が起こっているのか、本当に何も知りません
でした。
それから講義を受ける中で原発予定地の生命多様性についての話や祝島のシーカヤッ
ク隊の方の話を聞くなどし、自分の考えがどれだけ実情と離れたものだったかを知っ
た後、今回『祝の島』を観ました。島民の方々が反対運動をする姿ももちろんありま
したが、それよりも島民の方がどんな暮らしをしているのかということに焦点が当たっ
ていました。一本釣りや浅瀬で漁をする漁師の方、おじいさんの代からの棚田を耕す
方、島の小学校の生徒たち。年に一度の祭りとそれと同時に一気に賑わう島の様子。
観ていて一番いいなと思ったのが、島の皆さん誰もが仲が良く、助け合い暮らしてい
る事でした。夜になると必ず雑談しに集まるご近所の人たち、通りすがりに船のペン
キ塗りを手伝う男の方。一番面白いと思ったのはギターのコンサートに着物を着て飛
び入りする女の漁師の方です。
ですが、そのような、観ているこちらも笑顔になるような様子を見ているからこそ、
所々で映し出される原発反対の運動に違和感を覚えました。島を歩く反対デモの習慣
化や漁船に乗って工事の中止を求める姿は、普段笑いあい助け合いしている島民の方々
からは想像できないし、似合わない姿だと感じました。しかし、それほど島民の方は
原発計画により海が汚されてしまっていることに怒っているということが伝わってき
ました。
『祝の島』を通し島の人々の姿を見て、島民の方々は結果として原発反対ですが、
何より許せないのは海が汚されることなのだと思いました。また、原発計画は何かお
かしいと思わざるを得ないと感じました。私に出来ることは、まず「本当の事」をき
ちんと知ること思いました。原発についても、現状についても、私が知っていること
があまりにも少ない事に気付きました。知った上で何ができるかはまだ分かりません。
ですが、それに気づけただけでも私にとっては大きく一歩踏み出せたと思います。
素敵な作品をありがとうございました。
◎纐纈あや監督へ
私は、山口県の上関町に祝島というところがあるということ、そこの島民の方々の
ほとんどが65歳以上であること、そして、そこでは原発問題があるということを知り
ませんでした。なによりも、海がきれいで自然が豊かであるなぁと思いました。初め
て「祝島」という映画を見て、島民の方々が断固として原発に反対していること、し
かし全島民が反対運動をしているのではなく、原発そのものには反対であるが、反対
運動に行きすぎに疑問を持っている島民も一部いるということを知りました。原発問
題のせいで、自然破壊が引き起こされたり、島民が二極化され、28年前までの穏やか
に暮らしていた全島民同士の関係も一部崩れてしまっているんだなぁと思いました。
映画を見る前は、原発に反対である祝島の人たちの反対運動をひたすら描いた作品な
のかなぁと思いましたが、タコの一夜干しをしているおばぁちゃん達、生徒が3人だ
けである小学校で元気よく歌を歌っている子供たち、大晦日の夜にこたつで紅白歌合
戦を見ているおじいさんやおばあさん達など祝島の方々の日常のおだやかな暮らしの
シーンもあったので、微笑ましい作品でもありました。
この中国電力が建設を予定する原子力発電所は、祝島と海を隔てた非常に近いとこ
ろに作られるそうなので、海で新鮮な魚やタコ、貝、海藻を獲って食べている島民の
方々にとっては非常に迷惑なことであるんだなぁと思いました。そして、原発という
のは必ずしも安全なものではなく、世界各地でも原発事故が起こっていることから、
島民の方々は毎日、危険と隣り合わせの生活をしなければならないのだと思いました。
中国電力の人たちは島民の方々の気持ちや穏やかな暮らしを考えているのであろうか
と思いました。私は、危険と隣り合わせの生活を余儀なくされるなんて、耐えられな
いと思うので、穏やかに、平和に暮らしている島民の方々の生活を壊そうとする原発
建設には反対です。この「祝の島」という映画は、島民の方々の原発問題についての
思いや、なにげない穏やかな暮らしへの強い思いが伝わる映画であると思います。あ
りがとうございました。