サービス業としての大学)授業が伝説になる時
2010/06/20
twitter をしていて教えられたのですが、
ベッツィ・サンダース、1996『サービスが伝説になる時』ダイヤモンド社(ただいま
注文中)には、以下のようなことが書いてあるそうです。
不満をもつ顧客の96%は黙って二度と来ない。苦情が一件あれば26人が同様の不満
を持つ。苦情が迅速に解決されると96%は再び取引したいと考える。不満がある人は
その事を10人に話す。苦情が解決されるとその事を6人に話す。
これは、とてもなっとくの行く話で、フィールドワークでもなんでも同じことだなあ、
と思います。これにヒントを得て、企業→大学、サービス→授業、顧客→学生 など
とエディターで置換をしてみたら、ほとんどうなづける文章になりました。
オリジナルは、以下のサイトから借りました。
http://blog.goo.ne.jp/suke03_tam24/e/b8c5422ce482d529ab88324f08e4c84a
「授業が伝説になる時」
p.3 学生の間で伝説として語り継がれる授業は情熱的なリーダーシップからしか生
まれない
p.19 彼女は、彼女にとってあまり馴染みのない学生に、非常に長い時間を費やして
対応していました。これは一見時間の無駄のように思われます。しかし、A大学では、
もっと重要な仕事があるなどと教員に言うような学部長に給料を払うことのほうが、
無駄であると考えられているのです。
p.20 伝説の授業の本質は、実際に生じ得た「成果」ばかりでなく、能力や成果を高
める「プロセス」にも注意を向けるという点にあります。自分が全力を尽くしてやっ
たことは、自分のもとに戻ってくる。そして自分の中に根づき、成長をもたらすので
す。
p.30 特別な授業を受けると、人は誰かに話したいと考える。人に話すことで、
学生は教員の特別な能力と意欲を賞賛すると同時に、授業の対象となった自分をも誇
りに思う。
p.33 満足した学生が自発的に語ってくれる言葉以上に信頼される広告などあり得ま
せん。
学生を満足させようと努力する教員に対して、十分な資源配分を行うようなリーダー
シップを醸成するには、多大なコストがかかるのです。言い換えれば学生や教員に対
する献身があって初めて、伝説となるような授業が実現されるのです。
p.35 授業に対する評判を伝説の域にまで高めてくれるのは学生でしかないのです。
学生が話さずにいられないほどの意義ある授業だけが、重要な授業となる。
p.36 (どの業種であれ、組織に)広く見られるのが、競争に勝つ、あるいは少なく
とも競争に追随していくためにできるだけのことをするという姿勢です。この考え方
は、学生の存在こそが自分の大学の存在理由であるという重大な事実を見失っていま
す。
p.39 “学生様”が我々の教育の唯一の存在理由である。
自らの存在を学生に奉仕するためと考えている大学では、学生をよりいっそう大切
にするために、特別な教育資源の開発を重視しています。それは、教員とのパートナー
シップです。このパートナーシップこそ、学部の種類や大学規模、問題の複雑性、立
地などを問わず、伝説の授業を実現する基盤となるものです。
p.40 授業が大学の根幹に根づいている大学とそうでない大学の最大の違いは、リー
ダーシップにあるのです。
p.49 授業とは一言でいえば、私たちが何をするかではなく、私たちが何である
かということなのです。学生と接する際の態度には、皆さんの“人となり”全てが反
映されてしまいますから、授業そのものが“生き方”になっていなくてはならないの
です。
p.59 エクセレント(卓越した存在)になることほど、手間のかからないものはない。
エクセレントになるためには、エクセレントになり得ないことをするのをやめるこ
とがいちばん手っ取り早い。
p.67 授業向上を大学の目標と言いながら、学長が授業向上の模範を示さず、それを
評価せず、報酬も与えられなければ、教員はいったい誰の行動を見習えばよいのでしょ
う。
p.75 学生のために働くという目標を掲げている限り、よくなったからもう努力しな
くても大丈夫などということは絶対にあり得ない。
p.85 学生を失うことを心配するよりも、現在の学生ニーズに応えることに重点をお
けば、必ず学生の満足度も卒業生の質も改善される。
p.96 乗客は自分のトイレが汚れているのがわかった瞬間、自分が乗っている飛行機
にも同じ程度の注意しか払われていないのではないかと考える。
p.104 学生の保護者は財布のお金で投票をしているのです。このコンテストに勝利
した大学は、すなわち学生が最も多く「賛成票」を投じた大学なのです。
p.107 学生の期待を過少評価すれば、大学は必ず滅びます。学生の期待に沿ってい
れば存続はできるでしょうが、エクセレントな大学の慈悲のもと、細々と暮らしてい
くことになるでしょう。
皆さんには、学生の期待を常に上回る、そしてほかのどこでも得られないような授
業をいち早く実現し、提供し続けることが求められているのです。
p.114 教育全体のコストのうち、最大かつ最悪のコストは、学生を失うことである。
p.122 授業を伝説のレベルまで高められるかどうかは、全教員に学生に奉仕する上
での自らの責任を、明確に理解させることができるかどうかにかかっているのです。
学生に直接接していない教員にとって、他の教員を学生と考え奉仕することが自ら
の責任なのですが、これを理解させることは容易ではありません。
p.135 学生の満足度は授業・教員のレベルに比例する
p.148 「もし教育で成功したいと考えるなら、教員に、自分たちが学長のために働
くのではなく、学長が自分たちのために働いてくれると思ってもらうことが不可欠で
ある」
p.158 教員には違いはない。問題はマネジメントにある。
p.168 B大学では、教員を「学生満足の最高司令官」に任命して、直接支援をして
います。C大学では、教員は教育の協力者という意味を込めて、「アソシエイト」と
呼ばれています。
p.203 大学の場合、誠実さという原則を曲げた行動が生じると、目標が散漫になっ
たり効率が低下したりといったことが観察されるようになります。次にあげるような
兆候が表れたら、かなり危ないといえるでしょう。
◇度を越した官僚主義の蔓延
◇協力関係よりも指揮命令関係の重視
◇終わりなき派閥抗争
◇モラールの低下
◇生産性の低下
p.217-8 効果的なリーダーシップを発揮している学長は、権限を自分に集中させる
ことにはあまり関心がありません。そうした学長が注視しているのは、ミッションに
とって何が重要であるかということです。すなわちある人の真の能力を見極め、そし
てその能力を活用することで、人々に最高の成果を実現してもらうようにすることな
のです。
p.229 授業を常に伝説のレベルに維持していく上で、唯一最大の障害といえるのが
「成功」です。成功を収めることで、学生は満足し、自らの経験を互いに語り合うよ
うになり、教員は自分たちが最高であるとどこへ行っても言われるようになり、学長
もメディアでもてはやされるようになります。そして現実と向き合うことを忘れてし
まうのです。
公立大学法人 山口県立大学
現代GP承継・地域共生授業担当
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