公立大学法人山口県立大学と山口市との包括的な連携・協力に関する協定調印式での、理事長・市長あいさつ
2008/02/28
2008年2月19日(火)、13時より、本学と山口市との間に、「包括的な連携・協力に関する協定」が結ばれました。
全学課題として、各部局長の皆さんが調印に立会ってくださいました。その中で、現代GP(地域の活性化・地元型)も、情報提供などで役割を果たすことができました。
ふたつの組織を代表して、それぞれの長が挨拶されたことを、以下に掲載しておきます。
(掲載にあたって、山口市については、企画調整課の、県立大学については、江里理事長の校閲をえております。)
とりあえず言葉だけを掲載しますが、写真ものちほど補充したいと考えております。
掲載責任者 安渓遊地
江里健輔学長・理事長の挨拶
山口県立大学は1.人間性の尊重、2.生活者の視点の重視、3.地域社会との共生、4.国際化への対応、という4つの教育理念を設定しております。特にその中で、地域社会への共生ということで、地域の要望に応えることができる「地域貢献型大学」として、県民の健康や文化の分野で、専門的教育と研究を行い、優れた人材や研究の成果を還元して、高い評価を得ることを目的としております。本学ではこれまで多くの教育・研究プロジェクトを推進してまいりました。例えば、受託研究として「徳地産鍋料理の開発」「ルイボス茶の研究」、共同研究として「バイキング料理を利用した食育のプログラム開発」、「山口県ヒノキ素材で創る健康寝台の新規開発研究」など、さらに、受託事業では「中山間地域集落ネットワーク形成支援事業に関する委託業務」などがあります。一方、生涯学習・リカレント教育では山口県内の市町に教員が出向いてサテライトカレッジ、公開講座を設けています。このように、本学では「地域貢献型大学」として、大学が持っている知的財産を地域に還元するため、地域に密着した事業を行っており、高い評価を得ています。
このようなわけで昨年は、各教員が一丸となって応募した文部科学省の現代GP(Good Practice、模範になるような取り組み)などの大学教育改革支援プログラムに、5課題が選定され、全国でも例のないほどの財政支援を得ることができました。5題のうち、安渓教授からの説明にもございました現代GP・地域の活性化・地元型という取り組みが、地域への貢献により大きな効果をもたらすものでございます。そういうことで大学の財政基盤もある程度充実したということで、地域にどのように貢献すればより効果的であるかを現在模索しているところです。
山口市との包括提携協議を調印できたことは、我々が目指す、地域にねざした大学(地域貢献型大学)となるための大きな礎になると信じ、非常に感激しておる所でございます。渡辺市長以下、市役所のみなさんにも心から感謝しております。本当にありがとうございました。
本学と山口市はこれまで、いろんな協力実績があるのですが、その協力実績をもとに、さまざまな取組みのなかで、本協定を結ぶことになりました。すなわち、平成16年9月30日に山口県立大学は、徳地町(当時)との連携教育協定(提携)がもとにあり、さきほども申し上げました安渓教授が中心になりまして、この協定に基づいて事業を展開し、共同研究や人材育成、地域の資源・伝統文化の発掘等の実績などが、数多くあります。いろんなところで発表しておりますので、もしご興味があれば見ていただきたいと思います。
ご存知のように平成17年10月に、徳地町が山口市と合併いたしました。合併した後も、これまでの実績をいかに生かすかというような方策をいろいろ考えていましたところ、新生山口市にも、これまでの実績を高く評価して戴くことができました。
一方、我々の大学は平成18年4月に独立行政法人になりまして、本学と新生・山口市の地域活性化に向けてのあらたな共同改革の志向が一致いたしました。そういうことで、本学と山口市の連携教育をこれまで以上に具体化するために、山口市との包括連携協定の締結ということになりました。
具体的には教育・文化の振興に関すること、あるいは人材育成に関すること、保健・福祉に関すること、さらには産業振興に関すること、国際交流推進に関すること等々がございます。保健・福祉に関しては看護栄養学部および社会福祉学部がございますので、いろいろなプロジェクトを積極的に推進することが出来ると期待しているところです。そのような大きな題目を立てて、その中にさまざまな取組がございますが、それはまた必要に応じてまたご説明するということにいたします。結論として、いくつかのこういう大きな柱を立てて、山口市との連携協定のもとで、今後、積極的にいろんなことに取り組んでまいろうと考えているところでございます。
今日、大学の生き残りは非常に難しい状況になっています。各大学が、大学としての存在感がなければ、生き残りが難しい時代です。山口県立大学は県内唯一の県立大学だということで、国立等々とはその存在感が異なるという視点で、県立大学を多くの県民に知っていただくことが、一番重要なことだと考えています。協定に基づき、県民の皆様等々の御指導・御鞭撻を賜りながらさらに発展したいと思っておるところでございます。
関係各位の温かいご協力をお願いいたします。
渡辺純忠山口市長の挨拶
ただいま、公立大学法人山口県立大学との包括的連携・協力に係る協定につきまして、関係の皆様のお立会いのもと、無事調印できましたことを、大変嬉しく、また、ありがたく思っておりまして、江里理事長をはじめ県立大学の皆様に、まずもって、心からお礼を申し上げます。
今回の協定調印は、先ほど経緯等のご紹介もございましたが、これまでの両者の協力関係の歴史、とりわけ県立大学の先生方や学生の皆さんの地域社会への思いや真摯なお取り組みの上に築かれた相互の信頼関係の賜物であろうと思っているところでございます。
この度の調印を機会に、これまで以上に連携・協力関係を強めながら、社会に貢献する人材と価値の創造に向けた取り組みを増進していきたいという思いをあらためて強くしたところでございます。
また、この協力関係は、単に、市と大学との関係ということに留まらせてはならないわけでございまして、市民と大学、また、市民と学生の「心のきずな」というような関係に深めて行くことが大切であると考えているところでございます。こうした形の中で、まちが学生を育て、大学がまちを育ててくれる、そのような良い関係が築かれていくことを願っているところでございます。
ところで、本市は県立大学をはじめとして、山口大学、山口芸術短期大学、そして、山口学芸大学という、それぞれ特色をお持ちになる4つの大学を擁しておりまして、従来から、まちづくりの柱のひとつに、「学園都市づくり」を掲げ、取り組んできているところでございます。この「学園都市」というのは、学生がまちにあふれ、まちを楽しみ、まちの中でさまざまなかたちで活躍しているような都市であり、また、まちと大学が一緒になって、地域の課題解決や新しい価値の創造に絶えず取り組んでいるというような都市の姿をイメージしているものであります。
こうしたことから、これまで、市と大学と商工会議所が連携して、それぞれのトップがまちづくりについての意見交換を行う「山口まち大学会議」の開催や、市民が主体的に学んだり、課題解決に取り組む場である「やまぐち街なか大学」の運営、また、まちと大学が連携してまちづくりに取り組んでいる全国の都市同士の情報交換の場となる「まちは大学全国サミット」の開催などに取り組んでいるところでございます。
また、地域課題の解決や新しい価値の創造に向けた産学官民のネットワークとなる、「仮称アカデミー機構」の設立に向けた取り組みも始めているところでもございます。
この度の協定は、こうした本市が進めている「学園都市づくり」をさらに大きく前進させるものと期待をしているところでございます。
さて、今後は、この協定に基づきまして、幅広い分野での連携・協力をしていきたいと考えておりますが、その中でも、早速、連携・協力をお願いしたいと考えているテーマについていくつか申し上げたいと思います。
そのひとつは、中山間地域づくりでございます。本市は、市域の約58.5%が中山間地域でございますが、御案内のとおり、この地域は、地域を支える第1次産業の疲弊や人口の減少等により、地域活力の低下はもとより地域コミュニティそのものが危機に瀕しており、地域が有するさまざまな多面的機能の確保も困難な状況になってきております。こうした問題は、中山間地域の住民だけの問題ではなく、市街地や沿岸部の住民にとっても無視できない大きな問題であり、その解決に向けて全市的に取り組んでいく必要があると考えております。
中山間地域を持続可能な地域にしていくためには、市民がこの地域の大切さを知り、中山間地域との関わりや地域資源の活用をもっと増大していくことが重要であろうと考えております。こうした取り組みを進めていく上からも、多面的機能への理解や地域の付加価値化に大学の学究的なアプローチが重要であろうと考えております。
幸い、県立大学におかれては、旧徳地町での活動実績もあり、また、既に限界集落等の調査研究にも取り組んでおられますことから、政策形成へのご支援をお願いしたいと考えております。
2つ目は、国際化への対応です。国際化の進展、とりわけ、東アジア地域との関係は、予想を超えるスピードで広がりと深まりをみせてきており、本市のような地方都市においても、早急な対応が必要であると考えております。東アジア地域の人々との交流の促進は、深みのあるまちづくりを進めていく上からも重要であり、そのためにも本市を訪れやすい環境づくりや魅力づくりが欠かせないと考えております。
こうしたことから、留学生の受け入れや大学同士の学術交流等で実績のある県立大学のご協力は欠かせないものと考えております。
3つ目は、地域文化の掘り起こしや新たな文化創造です。昨年10月に策定した本市の総合計画におきまして、まちづくりの基本方向の一つに「まちとしての価値」の創造を掲げたところでございます。本市が将来にわたって都市として生き残っていくためには、このまちにしかない個性的で魅力的な「まちとしての価値」を持つことが必要であるとの認識のもと、文化的価値創造の取り組みを全市的に推し進めていくこととしたところです。
この取り組みを進める上からも、大学の持つ研究機能や教育機能は欠かせないものと思っております。これまでも、県立大学におかれましては、数々の実績を積まれておられます。例えば、山口市が全国に誇る貴重な伝統芸能である山口鷺流狂言が、今日保存伝承されているのは、県立大学の故先生の研究と保存に向けたご支援があったればこそと伺っております。また、本市を代表する新しい文化イベントに成長した「アートふる山口」においても、県立大学の学生の皆さんのお力に支えられていることも伺っております。
今後も、大学の有する知的財産や教育研究機能、そして学生の皆さんのパワーも貸していただきながら、文化的価値創造の取り組みに連携・協力をお願いしたいと思っております。
この他にも、保健、福祉、生涯教育の分野など挙げればきりがないわけですが、できることからひとつずつ着実に前進させていくことが重要と考えております。
最後に、今、まちの魅力というものが、学生が大学を選択する要素のひとつになっているということをお聞きします。魅力的なまちにある魅力的な大学に人材が集まるということなのでしょう。本市といたしましても、山口ならではの文化的価値の創造を通じて、学生にとっても魅力と活力のあるまちづくりに努めていかなければなりません。また、学生が卒業したのちにも、将来ずっと山口を愛していただける、愛着を持ち続けていただけるように、地域の中で学び、活躍していただける機会をたくさんつくっていくことも大切であると考えております。
そのためにも、産学官民の連携による取り組みは、今後ますます重要になってくると思っております。こうした意味から、これまで、地域との交流を積極的に進めてこられ、地域との共生をさらに図ろうとされておられる県立大学のお取り組みは、まことに心強く感じております。本日の包括的連携・協力協定の締結によりまして、両者の良い関係が一層強化され、「魅力的な大学がある魅力的なまち」にしていけるよう努力してまいることをお約束申し上げまして、私のあいさつとさせていただきます。
今後ともどうぞよろしくお願いいたします。