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島の生活誌ブックレット)琉球新報に波照間永吉先生が書評をしてくださいました
2009/03/29
聞き書き・島の生活誌(1)「野山がコンビニ‐沖縄島のくらし」(2)「ソ
テツは恩人‐奄美のくらし」2009年3月29日
知識は、学校や本だけから学ぶものではない。島に伝わる「島に生きる知恵
と知識」もまた立派な知識である。これが「民俗知」と呼ばれるものであり、
島で生きるためには必須のものだった。この2つの小さな本は、奄美・沖縄の
島に生きてきた人々の知恵と知識を聞き出し、記録したものである。略称「地
球研」の「列島プロジェクト」の奄美沖縄班に集う9名の研究者の仕事だ。何
やら難しそうだが、人の話を聞くのが好きな私にとっては、居ながらにして島
の人々の語りに接する楽しみを覚えさせられた。
人間の生活のために激変させられつつある自然環境。しかし、それは列島の
歴史の中ではごく近い過去からのことだ。むしろ人々は長い間、自然の一部と
して、自然の営みの中で生きてきた。しかし、それはユートピア的生活を意味
しない。ある話者は、島で生きることの困難さとそれを乗り越える知恵は「ア
イニール ターヌミジェー クミール」(有る時にこそ田の水はくむのだ)と
いう言葉で表されていると語る。この言葉は「飢え死にするかもしれないとい
う、そんな、奥底に悲壮感がある生活の思想なんです」と言う。ガシ(沖縄語
で飢饉(ききん)のこと)と背中合わせだったのだ。生きるためには盗まなく
てはならない場面もたくさんあった。生きていくために人は学ばなければなら
ない。子どもたちは「子どもどうしの競争」として「草木の実や自然のものを
とって食べる」なかから学ぶ。しかし競争だけではない。自然の恵みは等しく
分配されなければならない。名護湾のヒートゥ(イルカ)獲りはそれを教えて
くれる。
田の緑肥が沖縄ではウカバギーの枝葉であるのに対し、奄美ではソテツの葉
が用いられた、というのも本書で初めて知った。自然から乖離(かいり)した
生活を送る者には想像もつかない民俗の知識が、耳に響いてくる。「自然をど
のように利用していたのかを勉強したい」という著者たちのテーマは、島(琉
球弧)の “持続可能性”を考えるとき、多くの人々が共有できるものであろ
う。2冊の本の伝えるところに耳を傾けたい。



