2008/2/24)柳井市で「石風呂がつなぐ海と山」というお話しをさせていただきます
2008/02/19
http://ankei.jp/yuji/?n=424でご案内したとおり、
柳井市でグローバルコモンズという科研費の集まりがあります。そこでお話しさせていただく予定の内容です。
石風呂がつなぐ海と山――周防大島と徳地の交流を例として
安渓 遊地(あんけいゆうじ 山口県立大学教員
自然の豊かな風光明媚なところは、一面では過疎高齢化の激しい場所でもあります。そこに、巨大な開発計画がやってくるとき、どのような対応が可能でしょうか。
スペイン・ナバラ自治州での、自然エネルギーと農家民宿運動というひとつの答えを見いだした経験を踏まえて、現在山口県立大学が取り組んでいる、山口市徳地と周防大島等との交流によるあらたなツーリズムの展開についてスライドを用いてご報告します。
1.スペイン・ナバラ自治州の地域おこし
・内戦と独裁の歴史を越えて(1978年スペイン新憲法成立)。
・日本をはるかに上回る少子高齢化の中で過疎を「適疎」にするための努力。
・風車などの再生可能エネルギーによってわずか12年でエネルギー自給率70%を達成。
・田舎ツーリズムの先進国フランスに見習って、20年で「いなかの宿」が500軒に。
・短期間でヨーロッパの最先端をゆく地域として注目をあび、宿泊客が殺到。
2.徳地と周防大島の地域おこし
・地域づくり達人塾――市町村合併の嵐の中でただの忘れられた過疎地とならないために。
・800年前、重源(ちょうげん)上人が東大寺を再建した材を出した徳地の歴史と伝承。
・民俗学者・宮本常一を生んだ周防大島に残されたさまざまな民俗文化財。
・共通する「石風呂」というサウナに注目して交流を開始(2007年夏)。
・地元主導で地域NGO間の「お見合い」「結納」「結婚式」へ。さらにそれを他の交流へつなげていくべく連携をスタート(2008年1
月「国際石風呂会議」発足)。
・大学が県の「やまぐちスローツーリズム」事業の委託を受けて交流を積極的に支援。
・キーワードは*「物語性のある地域間交流」「バイオマス利用と里山再生」「地域と大学」*。
3.祝島と長島の明日を考える
・緑と水と祭ばやしの力――南方戦線を生き延びた郷田実さん(宮崎県綾町)の経験。
・例えば伝統の「神舞」でつながる地域の絆を「物語性のある地域間交流」に育てられないか。
・豚の放牧による里山再生は、ナバラの豚の放牧の例や高級生ハムなども参考になるのでは。
・都会の人たちを楽しませるサービスだけではなく、大学生なども交えてこき使おう!
・祝島・長島の人と自然を丸ごと味わう「せとうち里山里海ファンクラブ」(仮称)を創ろう。
・キーワードは*「流域の思想(**bioregionalism**)」「スローライフ」「足下から平和をつくる」*
参考文献*(主な内容)*
安渓遊地、2004「瀬戸内海がよみがえる日――上関原子力発電所と周防灘の未来」『地平線』37号、1-15(広島 総合文化情報誌)広島KJ法研究会*
(地域のもやいなおし=絆の再生)*
安渓遊地編、2004『やまぐちは日本一 山・川・海のことづて』弦書房、福岡*(重源上人)*
安渓遊地編、2006『続やまぐちは日本一 女たちの挑戦』弦書房*(長島・祝島・ナバラ)*
安渓遊地・安渓貴子、2006「スペイン北部の山村の風土を生かして――ナバラ自治州で出会った持続可能な暮らしへの挑戦者たち」『山口県立大学大学院論集』7
号、1-29*(ナバラ)*
宮本常一・安渓遊地、2008『調査されるという迷惑――フィールドに出る前に読んでおく本』みずのわ出版、神戸*(研究者の責任)*