![]()
書評)「島からのことづて」を読んで
2006/09/29
ネットサーフィンをしていたら、
沖縄病TOBIの琉球弧探訪
http://homepage2.nifty.com/ryukyuko/index.html
というサイトがあって、「島からのことづて」の感想文が載っていました。
「美味しんぼ」の中で、山岡と雄山がトマトのことで争った時、緑健農法のトマト
がすばらしくて、雄山が「トマトがえらいだけじゃないか」というのに対して「そう
です、トマトが偉いのです。私たちは何もしないのです」と、トマトのハウスの持ち
主が答えるというところを思い出しながら読ませてもらいました。
以下、引用です。写真もついていましたが、省略。
「島からのことづて-琉球弧聞き書きの旅」
安渓遊地・安渓貴子 著 葦書房 2,200円+税
2000年4月30日 第1刷発行
大学で一人の教授と出会い、その教授を師として学びあった二人が、研究を共にす
るうちに夫婦となって、西表島に滞在したりしながらフィールドワークを行った――。
この本はその一端をまとめたものです。
学術的に小難しくまとめたものではありません。標記のしかたは島のおじい、おばぁ
と話している様子をそのまま記しただけのもの。その姿勢は終始一貫しています。
そのような内容のものを本にするだけで印税がもらえる著者というのは、まったく
のシアワセ者以外のナニモノでもないでしょう。だってこれ、著者の創作というより
も話し手のしゃべったことが中心なんだもの(単に羨ましがっているだけです、悪意
なし)。
フィールドワーク、「聞き書き」という手法については、最近頻繁に聞かれるよう
になりました。民俗学の世界をはじめとして最近とみに光が当てられているような気
がします。私も“汝の立つところを深く掘れ、そこに歴史あり”という言葉に刺激を
受け、沖縄だけでなく地元東北の歴史・民俗についても注目しているのですが、関係
する書物は聞き書きが花盛りといった感があります。専門家の加工がないので系統的
でないといううらみはあるものの、話者の思いや感情がストレートに伝わってくるの
で、ある程度の前処理さえほどこされていれば、読み物としてたいへん楽しいものが
多いのではないでしょうか。
著者は本書の中で、自分たちの研究について、『僕らがやってきたのは、既成の学
問でいうと何になるのかよくわからないけれど、広い意味で地域研究というものだろ
うよ。専門は何ですか、とよく聞かれるけれど、なかなか苦しい質問だね。心からほ
れ込んでするフィールドワークが地域研究の核心だと思う。』―― と語っています。
著者は物々交換について聞きたがっているようですが、おじいたちにとってはそん
なことは生活の歴史全体のほんの一部でしかないわけで、物々交換にたどりつくため
には聞き手はおじいの話の全部を聞かなければなりません。そう、まったくこれこそ
地域研究なのですよね。
掲載されているインタビューは、西表島、多良間島、水納島(八重山)、与論島、
種子島、屋久島、中之島(トカラ)でのもの。いろんなおじい、あばぁがとっかえひっ
かえ出てきて昔語りをしますが、これを読むのはけっこう楽しいです。
1990年代のものが中心ですが、話をしてくれた人の多くは残念ながらもうこの
世を去っています。それぞれの語り口が生き生きとしていただけに、この現実は時の
無常、歴史の流れ、自然の摂理の偉大さを感じざるを得ません。
(2002. 6.26 読)


