空き家×交流)素人のにわか瓦屋奮戦記_RT_@tiniasobu
2020/03/21
父が言っていましたが、瓦屋も井戸掘りも、食事の時には地上に戻ってするのだとか。私の戻るところはどこでしょう。
山口市阿東の息子の家から歩いて三分ほどの空き家を修理して交流拠点として活用するということをこの半年ばかりやってきました。できるところはなんでも自分でやるのです。風呂桶を薪風呂として復活するための桶と釜の取り替えや、ソーラー温水器の交換と配管なども手がけています。助成金をくださった、山口市定住促進課に、報告書(様式自由)を出すんですが、こんなに詳しく書いたら、一冊の本になってしまうと思いつつ、書いています。
素人には手が出せない難題は、廃屋になった部分を安全に撤去することでした。廃屋部分をバックホー(通称ユンボ)という機械で引き倒してもらったとき、新しい家と廃屋部分の屋根の材料がつながっていることに気付かず、垂木が折れ、野地板は剥がれ、端のほうの瓦が地面に落ちると言うことになってしまいました。
数ヶ月放置していましたが雨にあたって暖かくなってくると家の構造材である材木が腐る恐れがあります。腰を上げてにわか瓦屋になりました。
折れた垂木は、添え木をあててビスで止め、その上に新しい野地板を打ち付け、黒いアスファルトを引いたルーフィングという防水紙を貼ってその上に、瓦を支える瓦桟(かわらざん)という細い材を打ち付けるのですが、はじめてのことで、その正しい間隔がわかりません。
屋根の上でしばらく考えて、無事に落ちなかった瓦の10枚分の長さを測って、それを10分の1にすることにしました。50年ほど前に葺かれた赤い石州瓦です。瓦桟は、もともとのものよりは、厚みが大きいのですが、材木屋が板の乾燥の時に、間に入れる5分(1.5センチほど)角の桟木を代用しました。次は、もともと下側の、廃屋部分とひとつだった屋根のところには、付けてなかった破風板(ひさしの端を守る板)です。長さは4メートル、幅は7寸、厚みはできれば8分はほしいところです。手持ちの材料のなかから、やや薄いのですが、ほとんど節のない厚さ5分の杉板を使うことにしました。普通の施工では、瓦を受ける材を全部付けてから、最後に付けるのですが、今は、隣の瓦が一方しかない、ひさし部分の瓦の下に隙間ができるの
塞ぐため
の、断面が三角形の材(たぶん瓦座といいます)が必要ですが、普通のホームセンターに売っているものではありません。前に家を建てたときの余った材をとってあった在庫の中から探し出して、足りない部分は垂木をけずって適当に作ることにして、あらかじめ地上で破風板を合わせてネジ止めしました。普通は、瓦座を野地板の上に打ち付けてから破風板を打つのでしょうが、L字方に組みたてた瓦座+破風板を軒瓦の下に押し込んでやれば、不安定な足場の上で、一人でも破風板を仮止めすることができます。
木材とアスファルト紙でできた下地の部分が完成したら、その上に瓦を置く段階です。瓦は数枚おきに、ステンレスの釘で野地板に打ち付けて固定します。解体工事の時にずれたり落ちたりした、幅4列ほどの瓦を、奧の列から順番に載せていきますが、一番端の瓦で難問が発生しました。屋根の上の方では、下地の木部より外にはみ出して雨よけの役目をしている瓦が、下の方ではだんだん内側に寄って、雨が垂木や野地板にかかるのです。ルーフィングといってもただの紙ですから、長持ちするものではなく、破れから入った水が下地を腐らせることになるでしょう。瓦を置く間隔を広めにする努力をしてみましたが、互いにかみあうように作られている近代瓦は、1枚でせいぜい2ミリほどしか遊びがないので、3センチもあいた空間を
4列の瓦で調整することはできないことが分かりました。
さあ、どうしましょう。上が小さいなら、下をそれに合わせて小さくするか。でも、せっかく作った下地を数メートルにわたって切り取るのは、すでに打たれた釘などもあって、電気鋸で簡単にというわけにはいきません。たぶん、水切りの金属版を瓦の下に入れるのがいいでしょう。ただし、それがあまり不格好にならず、しかも雨が瓦の下の奧の方には流れ込まないようにしなければなりません。適当な板金を探しに、近所の量販店、ナフコに行きました。破風板にかぶせるカラー鉄板がありました。これは山型の断面をしていますが、今必要なのは、水を流せる谷型の断面ですから、裏返しに使うことにして、裏側に塗装をすることにしました。素人の手に負える中ではもっとも強い防食効果のある亜鉛粉+エポキシ樹脂のジンク
スプレーという塗料です。
この水切り板を、破風板の上部に釘止めして、いちおう、屋根の修理は終わりました。割れてしまった軒瓦2枚は、これだけを買えそうにもありませんから、平瓦で代用しましたが、台風などの強風の時には、風であおられて飛びやすいでしょう。もうひとつ、破風板が雨で腐らないように、なにか塗装しないといけません。ドイツ製のキシラデコールという強力な防腐・防虫・防白蟻という薬品がありますが、有機リン剤にアレルギーのある私が、これを塗るためには風向きなどをよく考えてからにしましょう。
さて、ご近所のSさんという女性と知り合いになりました。なんでもざっくばらんにお話をするようにしている私ですが、いまやっている空き家×交流のことで、瓦で困っているという話をしました。すると、なんという奇遇でしょう。「実家が瓦やです」とのこと。使わない余った瓦の中に、必要なものがあったらもらってあげるというのです。しかも、車で5分ほどのご近所です。割れた瓦1枚をおあずけして、それと同じのが2枚あったら……とお願いしました。
食後の昼寝をしていたら、Sさんが瓦持参の瓦職人のお父様を連れてきて起こしてくださいました。瓦と金槌と釘をもって、身軽にはしごをあがって行かれました。はしごを押さえながら、Sさんが「お父さん大丈夫?」と声を掛けるので、「おいくつですか」と尋ねたら、なんと80歳。現役を退いておられますが、娘の知り合いのために来て下さったのです。金槌の先でちょいちょいとあたりの瓦の位置を直す様子に長年の職人技を感じさせます。写真でみると、下ではしごを支える時に、一段目に片足をかけてしっかり地面に固定しているのは、さすが瓦屋の娘です。
プロが来て下さったので、瓦屋根の維持管理について具体的な助言を求めました。
──家の後ろ側の軒の瓦が、雪の時に下にずって来るんですが。
こうしてみると、瓦の向きがまっすぐじゃないところがありましょう。そういうところは、瓦桟が痛んどるです。下から2列目の瓦を外して、瓦桟を打ち直すとええ。4段目の雪止め瓦のでっぱりに垂木なと置いて、その上に外した瓦を預けて作業をしたら具合がええ。
──なぜ軒瓦がずれるんでしょうか。雨漏りとか?
荷がかかるところじゃから。それと、この家が建った頃は、瓦桟に安い外材を使いよった。どうしても湿気で腐るのが早い。うちは、杉のしかも無節の材を使うようにしている。見えんところにしっかりした材料を使うて工事をせんといけんの。
──ルーフィングも張り替えでしょうか。
いや、そこまでせんでも大丈夫や。(瓦が落ちて割れるようになる前の)今なら金をかけんでも直せる。
──もうひとつ、二階の樋から来ている雨水を、太い塩ビ管に通して、庭に直接落ちるようにしてあるんですが。
それは、住んでいて面白くないでしょう。普通の雨樋に変えて、向きを変える部品を2つほど買って、端っこを1階の雨樋の中につっこむようにすればええ。
──あふれませんか?
いや、桝までが近いから、大方飲むでしょう。
──2階の窓の下の半割瓦が外れて落ちていますが、あれは漆喰で直せますか?
はい。漆喰をつけて入れてやれば、きれいに直せます。
──ありがとうございました! 漆喰は買ってあります。
瓦やさんのお話を聞いたのは、2020年3月20日でした。
日本瓦の名称は、以下のサイトからの引用です。上記の文章で、破風板としたところに
けらば と書いてあります。割れてしまって換えがなくて困っていた 軒の横の端の瓦は けらばがわら なのでしょうか。
がんぶり など全く知らなかった単語もあります。
https://ameblo.jp/earth-home-godo/entry-11593541275.html
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