感染症と船)同時代の記録として_#COVID-19_#ダイアモンド_プリンセス号 #コロナウィルス #メディアリテラシー RT_@tiniasobu
2020/02/20
以下のやりとりについて、岩田医師と高山医師の電話によるやりとりがあり、その結果を、2月22日の 高山医師が、facebook
で書いておられます。
岩田医師のYouTube上の投稿は、日本語、英語ともに削除されたとのこと。それに対するコメントを高山医師は、facebookのお友達限定に変更したそうです。
高山医師の一般公開のfacebookの内容です
先ほど、神戸大学の岩田先生と電話でお話をしました。これまでのように穏やかにお話ができたことは言うまでもありません。
今回の一件については、いまだ見解の相違は残されているものの、これらを解消するべく議論を重ねたとしても、むしろ直面している課題を矮小化させかねず、周辺の状況を鑑みても建設的ではないとのことで一致しました。
岩田先生が2月18日に公開された動画について、すでに謝罪とともに日本語版と英語版の双方を自主的に削除しておられることを私は受け入れました。そして、私がフェイスブック上において修正を求めた日本語版と英語版の投稿については、岩田先生の求めに応じて「友人限定」として非公開とし、今後は記録にとどめることといたします。
今回は互いにとって残念な経緯となりましたが、岩田先生の優れた感染症医としての能力が、日本の感染症行政の発展へと活かされることを期待しています。
(2019年2月22日の引用終わり)
コロナウィルスによる新型肺炎のために、横浜港に停泊したままの豪華客船の中で何がおこっているのか、
一日で消えた岩田健太郎医師の告発動画の内容とその反響、反論などを あとから何が正しくて、何が適切だったのかを、知ろうとしても難しくなります。それでは検証ができません。記録として、文字起こしと、その後の動きを、ここに記録しておきます。
This is a record as a memorandum for a debate on the adquateness of
the Japanese quarantine in a cruising ship at Yokoham Port.
岩田医師が削除・高山医師が友達限定にすることにされたもともとの記事は、以下の通りです。
2月20日の会見https://www.youtube.com/watch?v=Vuy_Jqgl8X0
高山義浩医師のコメント(Facebook上の一般公開のメッセージ) https://www.facebook.com/profile.php?id=100001305489071&__tn__=%2CdCH-R-R&eid=ARDNI_rWcvi1kd9t75Y95EzJkFaS-ej5bHK7ZQX0DbscSZDFqTaU9zdsi8h29lXKsw1Q-C1XB-kKXnvU&hc_ref=ARRngmkHmT9_Nj9_NJuS50_wz3VVG10ltRHyYppyLsyaPfDRcWZH98vCsWx7Pkxlc7U&fref=nf
岩田健太郎です。
神戸大学病院感染症内科教授をしていますけれども、今からお話しする内容は、神戸大学など所属する機関とは一切関係なく、わたくし個人の見解です。あらかじめ申し上げておきます。
今日2月18日にダイヤモンド・プリンセスに入ったんですけど、1日で追い出されてしまいました。なぜ、そういうことが起きたのか、簡単にお話しようと思います。
もともと、ダイヤモンド・プリンセスはすごくCOVID-19(新型コロナウイルス)の感染症がどんどん増えていて、感染対策はうまくいってないんじゃないかとの懸念がありました。
環境感染学会が入り、FETP(Field Epidemiology Training
Programme=実地疫学専門家養成コース)が入ったんですけど、あっという間に出て行ってしまって、中がどうなっているかよくわからないという状態でした。
中の方からいくつかメッセージをいただいて、「怖い」、「感染が広がっていくんじゃないか」ということで私に助けを求めてきたので、いろんな筋を通じて「何とか入れないか」と打診していたんですね。
そうしたら昨日2月17日に厚労省で働いている某氏から電話がきて、「入ってもいいよ」と。「やり方を考えましょう」ということでした。
最初、環境感染学会の人として入るという話だったんですけれども、環境感染学会は「もう中に人を入れない」という決まりを作ったので、「岩田一人を例外にできない」ということでお断りをされて。結局、DMAT(Disaster
Medical Assistance
Team=災害派遣医療チーム)、災害対策の「DMATのメンバーとして入ってはどうか」というご提案を厚労省の方からいただいたので、「わかりました」と。ということで、18日の朝に新神戸から新横浜に向かったわけです。
そうしたら途中で電話がかかってきて、「誰とは言えないけど、非常に反対している人がいる」と。「入ってもらっては困る」ということで、DMATのメンバーで入る話は立ち消えになりそうなりました。
すごく困ったんですけど、「何とか方法を考える」ということで、しばらく新横浜で待っていたら、もう1回電話がかかってきて、「DMATの職員の下で、感染対策の専門家ではなくて、DMATの一員として、DMATの仕事をただやるだけだったら入れてあげる」という、非常に奇妙な電話をいただきました。
なぜ、そういう結論に出たのかわからないですけど、
「とにかく言うことを聞いて、DMATの中で仕事をしていって、だんだん顔が割れてきたら感染のこともできるかもしれないから、それでやってもらえないか」
と非常に奇妙な依頼を受けたんですけど、ほかに入る方法はないものですから、
「分かりました」
と言って、現場に行きました。
そしてダイヤモンド・プリンセスに入ったわけです。
入ってご挨拶をして。最初は「この人の下につけ」と言われた方にずっと従っているのかな、と思ったら、DMATのチーフのドクターとお話をして、そうすると「お前にDMATの仕事は何も期待していない。どうせ専門じゃないし」ということで、「お前は感染の仕事だろう。だったら感染の仕事やるべきだ」という風に助言をいただきました。これDMATのトップの方です、現場のトップの方。
「そうなんですか」と。私はとにかく「言うことをきく」というふうに約束していましたので、「感染のことをやれと言われた以上、やりましょう」ということで、現場の案内をしていただきながら、いろんな問題点を確認していったわけです。
それはもう、ひどいものでした。この仕事を20年以上やってですね、アフリカのエボラとか、中国のSARSとか、いろん感染症と立ち向かってきました。もちろん、身の危険を感じることは多々あったんですけど、「自分が感染症にかかる恐怖」はそんなに感じたことはないです。
どうしてかというと、僕はプロなので、自分がエボラにかからない、SARSにかからない方法は知っているわけです。あるいは、他の人をエボラにしない、ほかの人をSARSにしない方法とか、施設の中でどういうふうにすれば感染がさらに広がらないかということも熟知しているからです。それがわかっているから、ど真ん中にいても怖くない。
アフリカにいても中国にいても怖くなかったわけですが、ダイアモンド・プリンセスの中はものすごい悲惨な状態で、「心の底から怖い」と思いました。これはもう「COVID-19に感染してもしょうがないんじゃないか」と本気で思いました。
レッド・ゾーンとグリーン・ゾーンというんですけど、ウイルスがまったくない安全なゾーンと、ウイルスがいるかもしれない危ないゾーンというのをきちっと分けて、そしてレッド・ゾーンでは完全にPPE(個人用防護具)という防護服をつけ、グリーン・ゾーンでは何もしなくていいと。こういうふうにきちっと区別することによって、ウイルスから身を守るというのは、我々の世界の鉄則なんです。
ところが、ダイヤモンド・プリンセスの中は、グリーンもレッドもグチャグチャになっていて、どこが危なくて、どこが危なくないのかまったく区別かつかない。
どこにウイルスが、ウイルスって目に見えないですから、完全な「区分け」をすることで初めて、自分の身を守るんですけど。もう、どこの手すりと、どこのじゅうたん、どこにウイルスがいるのかさっぱり分からない状態で、いろんな人がアドホック(その場その場)にPPEをつけてみたり手袋をはめてみたり、マスクを着けてみたり、着けなかったりするわけです。
で、クルーの方も、N95(ウイルスの吸入を防ぐ医療用マスク)を着けてみたり、着けなかったり、あるいは熱のある方が、自分の部屋から歩いて行って医務室に行ったりするというのが、通常で行われているということです。
私が聞いた限りでは、DMATの職員、それから厚労省の方、検疫官の方がPCR(感染の有無を調べる遺伝子検査)陽性になったという話は聞いていたんですけど、それはもう「むべなるかな」と思いました。
中の方に聞いたら「いやあ、自分たちも感染するなと思ってますよ」というふうに言われてびっくりしたわけです。どうしてかというと、我々がこういう感染症のミッションに出る時は、必ず自分たち、医療従事者の身を守るというのが大前提で、自分たちの感染リスクをほったらかしにして、患者さんとかですね、一般の方々に立ち向かうってのは御法度、ルール違反なわけです。
環境感染学会やFETPが入って数日で出て行ったっていう話を聞いた時に、「どうしてだろう」と思ったんですけど、中の方は「自分たちに感染するのが怖かったんじゃない」というふうにおっしゃっていた人もいたんですが、それは気持ちはよく分かります。
なぜならば、感染症のプロだったら、あんな環境に行ったら、ものすごく怖くてしょうがないからです。
で、僕も怖かったです。これはもう感染、今これ“某ちょっと言えない部屋”にいますけど、自分自身も隔離して、診療も休んで、家族とも会わずにいないとヤバいんじゃないかと、個人的にはすごく思っています。
今、私がCOVID-19、ウイルスの感染を起こしてもまったく不思議ではない。
どんなにPPEとかですね、手袋とかあってもですね、「安全と安全じゃない所」っていうのをちゃんと区別できてないと、そんなものは何の役に立たないんですね。レッド・ゾーンでだけPPEをキチッとつけて、それを安全に脱ぐっていうことを遵守して初めて、自らの安全が守れる。自らの安全が保障できない時に、ほかの方の安全なんか守れない。
今日は藤田医科大学(岡崎医療センター)に人を送ったり、搬送したりするっていうのでみなさんすごく忙しくしてたんですけど、そうすると、検疫所の方と一緒に歩いていて、ヒュッと患者さんとすれ違ったりするわけです。
「あ! 今、患者さんとすれ違っちゃう!」
と、笑顔で検疫所の職員が言っているわけですよね。
我々的には超非常識なこと平気でみなさんやっていて、みんなそれについて何も思っていないと。聞いたら、そもそも常駐してるプロの感染対策の専門家が一人もいない。時々いらっしゃる方はいるんですけど、彼らも結局「ヤバいな」と思ってるんだけど、何も進言できないし、進言しても聞いてもらえない。やっているのは厚労省の官僚たちで、私も厚労省のトップの人に相談しました。話しましたけど、ものすごくイヤな顔されて聞く耳持つ気ないと。
で、「なんでお前がこんなとこにいるんだ」、「何でお前がそんなこと言うんだ」みたいな感じで知らん顔するということです。非常に冷たい態度を取られました。
DMATの方にもそのようなことで、「夕方のカンファレンス(会議)で何か提言申し上げてもよろしいですか」と聞いて、「まあ、いいですよ」という話をしてたんですけど、突如として夕方5時ぐらいに電話がかかってきて、「お前は出て行きなさい」と。「検疫の許可は与えない」、まあ、臨時の検疫官として入ってたんですけど、「その許可を取り消す」ということで、資格を取られて検疫所の方に連れられて、当初電話をくれた厚労省にいる人に会って、「なんでDMATの下でDMATの仕事をしなかったの」と、「『感染管理の仕事をするな』と言ったじゃないか」と言われました。
「DMATの方にそもそも、『感染管理してくれ』って言われたんですよ」
と話したんですけど、とにかく、
「岩田に対してすごいムカついた人がいる。誰とは言えないけどムカついたと。だからもう、お前はもう出ていくしかないんだ」
と話をしました。
でも、
「僕がいなかったら、いなくなったら今度、感染対策するプロが一人もいなくなっちゃいますよ」
と話をしたんですけど、「それは構わないんですか」って聞いたんですけど。それからこのままだと、もっと何百人という感染者が起きてDMATの方も、DMATの方を責める気はさらさらなくて、あの方々はまったく感染のプロではないですから。どうも環境感染学会の方が入った時にいろいろ言われて、DMATの方は感染のプロ達にすごくイヤな思いをしてたらしいんですね。それはまあ、申し訳ないなと思うんですけれども、別に彼らが悪いって全然思わない。専門領域が違いますから。
しかしながら、「彼らが実は恐ろしいリスクの状態にいる」わけです。「自分たちが感染する」という。それを防ぐこともできるわけです。方法ちゃんとありますから。ところが、その方法が知らされずに自分たちをリスク下においていると。そして、そのチャンスを奪い取ってしまうという状態です。
それで、彼らは医療従事者ですから、帰ると自分たちの病院で仕事をするわけです。今度はまた、そこから院内感染が広がってしまいかねない。
もうこれは……、大変なことでアフリカや中国なんかに比べても全然ひどい感染対策をしているし、シエラレオネの方がよっぽどマシでした。
日本にCDC(疾病対策センター)がないとはいえ、まさか「ここまでひどい」とは思ってなくて、もうちょっと、ちゃんと専門家が入って、専門家が責任を取って、リーダーシップを取って、ちゃんと感染対策についてのルールを決めて、やってるんだろうと思ったんですけど、まったくそんなことはないわけです。もうとんでもないことなわけです。
これ英語でも収録、つたない英語で収録させていただきましたけど、とにかく多くの方にダイヤモンド・プリンセスで起きていることをちゃんと知っていただきたいと思います。
できるならば学術界とかですね、あるいは国際的な団体がですね、日本に変わるように促していただきたいと思います。彼らはまあ、残念ながら……(携帯電話の着信で中断)
編集が下手でちょっと変なつながりになったと思いますけれども、考えてみると、2003年のSARSの時に、僕も北京にいてすごい大変だったんですけど、特に大変だったのは、やっぱり「中国が情報公開を十分してくれなかった」というのがすごく辛くて、何が起きてるのかよくわからないと。北京にいて本当に怖かったです。
でも、その時ですら、もうちょっときちっと情報は入ってきたし、少なくとも対策の仕方は明確で、自分自身が感染するリスク、SARSは死亡率10%で怖かったですけれども、しかしながら今回のCOVID-19、少なくともダイヤモンド・プリンセスの中のそのカオスの状態よりは、はるかに楽でした。
で、思い出していただきたいのは、COVID-19が中国・武漢で流行り出した時に、警鐘を鳴らしたドクターが、ソーシャル・ネットワークを使って「これはヤバイ」ということを勇気を持って言ったわけです。
昔の中国だったら、ああいうメッセージが外に出るのは絶対許さなかったはずですけど、中国は英BBCのニュースなんかを聞くと、やっぱりopenness(公開性)とtransparency(透明性)を大事にしているとアピールしてます。
それがどこまで正しいのかどうか僕は知りませんけど、少なくとも透明性があること、情報公開をちゃんとやることが、国際的な信用を勝ち得るうえで大事なんだってことは理解しているらしい。中国は世界の大国になろうとしてますから、そこをしっかりやろうとしている。
ところが日本は、ダイヤモンド・プリンセスの中で起きていることは全然情報を出していない。
それから、院内感染が起きているかどうかは、発熱のオンセット(事象の起こる日時と温度)をちゃんと記録して、それからカーブを作っていくという統計手法「epi-curve(エピカーブ)」というのがあるんですけど、そのデータは全然取ってないということを、今日教えてもらいました。
検査をした、PCR検査をした日をカウントしても、感染の状態は分からないわけです。このことも実は厚労省の方にすでに申し上げてたんですけど。何日も前に。全然されていないということで、ようは院内の感染がどんどん起きてても、それにまったく気付かなければ、気付いてもいないわけで、対応すらできない。で、専門家もいないと。グチャグチャな状態になったままでいるわけです。
このことを日本のみなさん、あるいは世界の皆さんがを知らぬままになっていて。特に外国のみなさんはそうやって、かえって悪いマネジメントでずっとクルーズの中で感染のリスクに耐えなきゃいけなかったということですね。
やはり、これは日本の失敗なわけですけど、それを隠すともっと失敗なわけです。
たしかに「マズイ対応であるということがバレる」というのはそれは恥ずかしいことかもしれないですけど、これを隠蔽すると、もっと恥ずかしいわけです。やはり情報公開は大事なんですね。誰も情報公開しない以上は、ここでやるしかないわけです。
ぜひこの悲惨な現実を知っていただきたいということと、ダイヤモンド・プリンセスの中の方々、それからDMATやDPAT(災害派遣精神医療チーム)や厚労省の方々がですね、あるいは検疫所の方がもっとちゃんとプロフェッショナルなプロテクションを受けて、安全に仕事ができるように。彼ら、本当にお気の毒でした。
ということで、「まったく役に立てなくて非常に申しわけない」という思いと、この大きな問題意識をみなさんと共有したくて、この動画を上げさせていただきました。
岩田健太郎でした。
(AERA dot.取材班)
以下は、高山医師のコメントです。
岩田
健太郎先生の動画(コメント欄にリンク)を拝見して、まあ、「岩田先生らしいなぁ」と思いつつ、あまり気にしていなかったんですが、しっかり炎上しているようです。
岩田先生をご存じない方々には、ちょっと刺激が強すぎたのかもしれません。ただ、下船していく乗客の方々、現場で頑張っている方々を追い詰めかねない内容なので、事実は事実と認めつつも、動画のなかに登場する当事者として、勘違いされていること、抜けているところは修正させていただきたいと思います。
>1日で追い出されてしまいました。
事実です。正確には、船内におられたのは2時間弱ですね。ご覧になったのは、ラウンジ周辺のみと認識しています。
>厚労省で働いている某氏から電話がきて「入ってもいいよ」と、「やり方を考えましょう」ということでした。
これ、私ですね。ただし、「入ってもいいよ」とは言ってません。その権限はないので。ただ、「やり方を考えましょう」とは申し上げました。そして、環境感染学会が活動していたので、そこを通じてなら活動できるかもしれませんとアドバイスしました。でも、申し込むも(しばし放置されたのちに)断られたとのことでした。
>DMATのメンバーとして入ってはどうかというご提案を厚労省の方からいただいた
これ、私です。その通りです。
>DMATの職員の下で感染対策の専門家ではなく、DMATの一員としてDMATの仕事をただやるだけだったら入れてあげる
これ、私。ただし、「入れてあげる」とは言ってません。その権限はないので。ただ、「DMATとして入る以上は、DMATの活動をしっかりやってください。感染管理のことについて、最初から指摘するのはやめてください。信頼関係ができたら、そうしたアドバイスができるようになるでしょう」と申し上げました。
というのも、現場は乗客の下船に向けたオペレーションの最中であって、限られた人員で頑張っているところだったからです。そうしたなか、いきなり指導を始めてしまうと、岩田先生が煙たがられてしまって、活動が続けられなくなることを危惧したのです。まあ、クルーズ船とは特殊な空間ですし、ちょっと見まわしたぐらいでアドバイスできるものではないとも思ってました。
もちろん、岩田先生の豊富な経験を否定するものではありません。ただ、DMATや自衛隊、検疫所など多様な組織が重層的に活動している特殊な環境ですから、まずは慣れていただくことを優先するよう私は求めたのです。
>「分かりました」と言って現場に行きました。
というわけで、岩田先生は約束してくださいました。
>DMATのチーフのドクターと話をして、そうすると「お前にDMATの仕事は何も期待していない、どうせ専門じゃないし、お前は感染の仕事だろう、感染の仕事やるべきだ」という風に助言をいただきました。
これ事実です。岩田先生は、これで自分は感染対策についての活動ができるようになったと理解されました。ただ、船には、DMATのみならず、厚労省も、自衛隊も、何より船長をはじめとした船会社など、多くの意思決定プロセスがあります。その複雑さを理解されず、私との約束を反故にされました。せめて、私に電話で相談いただければ良かったんですが、そのまま感染対策のアドバイスを各方面に初めてしまわれたようです。
結果的に何が起きたか・・・、現場が困惑してしまって、あの方がいると仕事ができないということで、下船させられてしまったという経緯です。もちろん、岩田先生の感染症医としてのアドバイスは、おおむね妥当だったろうと思います。ただ、正しいだけでは組織は動きません。とくに、危機管理の最中にあっては、信頼されることが何より大切です。
>アフリカに居ても中国に居ても怖くなかったわけですが、ダイアモンドプリンセスの中はものすごい悲惨な状態で、心の底から怖いと思いました。
これは岩田先生の感受性の問題ですから、否定するつもりはありません。また、船という特殊な閉鎖空間において、新興感染症が発生しているわけですから、怖くないはずがありません。ただ、そのなかで継続して頑張っている人たちがいることは、ぜひ理解してほしいと思います。ちなみに、私は明日も船に入ります。
課題は多々ありながら、これまで少しずつ改善させてきました。まだまだ改善の余地はあります。ただ、乗客がいる以上は逃げ出すわけにはいかないのです。少なくとも全てのオペレーションが終わるまでは、乗客を下船させて地域に、世界に放つわけにはいきませんでした。
最優先事項は身を守ることだと感染症医の端くれとして私も思いますが、2週間にわたり船のなかで頑張っている人たちは、乗客を支えながら日本と世界を守ることを最優先としているのです。
そういう事態になってしまったことについて、政府を批判することは構いませんが、解決を与えないまま現場を恐怖で委縮させるのは避けてほしかったと思います。逃げ出せない以上は・・・。
>ダイヤモンド・プリンセスの中はグリーンもレッドもグチャグチャになっていて、どこが危なくてどこが危なくないのか全く区別かつかない。
感染症医として「グチャグチャ」と表現されるのは、分からないこともありません。でも、この表現はゾーニングがまったく行われていないかのような誤解を与えます。しかしながら、実際はゾーニングはしっかり行われています。完全ではないにせよ・・・。
たしかに、先進国の病院であれば、あるいは途上国でセットされるNGOや国際機関による医療センターであれば、もっと洗練された感染対策が実施されるでしょう。でも、いきなり、約3700人の乗員・乗客(しかも高齢者が多い)において新興感染症が発生した船舶・・・ というミッションは極めて複雑なのです。
私は海外でのNGO活動に関わったことがありますし、現在も国際NGOの理事を務めていますが、どんなNGOであっても、あるいは国際機関であっても、これが混乱状態から始まることは避けられないでしょう。この2週間が反省すべきところがなかったとは言いませんが、ここまで現場はよく頑張ってくれたなと私は思います。精神論と嘲笑されるでしょうが・・・。
>検疫所の方と一緒に歩いてて、ヒュッと患者さんとすれ違ったりするわけです。
さすがに、これは違います。そのような導線にはなっていません。患者ではなく、乗客ではないかと思います。乗客ですら、そのようなことは稀だと思います。
>話しましたけど、ものすごく嫌な顔されて聞く耳持つ気ないと。
感染症医はコンサルタントとしての能力が求められます。それは聞いてもらう能力でもあります。私は聞いてもらえなかったとき、相手がダメだとは思いません。自分の説明の仕方が悪かったと思います。
>でも僕がいなかったら、いなくなったら今度、感染対策するプロが一人もいなくなっちゃいますよ
これは間違いです。毎日、感染症や公衆衛生を専門とする医師が乗船して指導しています。ご存じなかったんだと思います。まあ、ご自身に比べればプロのうちに入らないと言われると、返す言葉もありませんが・・・
>シエラレオネなんかの方がよっぽどマシでした。
シエラレオネにおいて、先進国が運用する医療センターのことだと思います。最貧国の市中病院の感染管理の悲惨さと同一視させることのないようにお願いします。
>エピカーブというのがあるのですが、そのデータを全然とっていないということを今日、教えてもらいました。
これ間違いです。岩田先生のせいではありません。教えた人が知らなかったんでしょうね。感染研がエピカーブを公表しています。新たな報告を加えてバージョンアップされるでしょうが、すでに公表してますし「全然とっていない」わけではありません。
以上、私なりに感じたことを述べました。見解の相違もあれば、私が間違っているところもあるでしょう。ぜひ、ご指摘ください。ともあれ、私は岩田先生の「志」を否定するつもりはありません。クルーズ船の対応についても教訓としていけるよう、きちんと検証して活かしていくべきです。
そもそも、こんなことは初めての取り組みです。失敗がないわけがありません。それを隠蔽するようなことがあれば、それは協力してくださった乗客の皆さん、仕事を放棄しなかった乗員の方々、自衛隊の隊員さんたち、そして全国から参集してくれた医療従事者の方々を裏切ることになります。
ただ、いま私たちの国は新興感染症に直面しており、このまま封じ込められるか、あるいは全国的な流行に移行していくか、重要な局面にあります。残念ながら、日本人は、危機に直面したときほど、危機そのものを直視せず、誰かを批判することに熱中し、責任論に没頭してしまう傾向があると感じています。不安と疑念が交錯するときだからこそ、一致団結していかなければと思っています。
衆議院では https://www.youtube.com/watch?v=SdovrUFe7Ds
厚労省・加藤大臣が反論「区域分け 行っていた」 船内対策の不備指摘に
FNN.jpプライムオンライン
新型コロナウイルスの集団感染が起きたクルーズ船では、20日も陰性が確認された乗客およそ500人が下船する予定。
一方、加藤厚労相は、20日の衆議院予算委員会で、神戸大学の岩田教授がクルーズ船内の感染対策の不備を指摘したことについて、ウイルスに汚染された危険区域と安全区域の区別は行っていたと、重ねて反論した。
国民民主党・後藤祐一衆院議員「(神戸大・岩田健太郎教授は)危ないゾーンを分けるのが鉄則。どこか危なく、どこが危なくないのか、全く区別がつかないと。これらは事実なんでしょうか」
加藤厚労相「(船内に)岩田医師はわずか2時間しかいなかったという事実はまず一つある。そのうえで、実際はゾーニング(区域分け)は、しっかり行われていると」
加藤大臣は、クルーズ船内で対応にあたっている厚労省職員のSNSへの投稿を引用する形で、岩田教授の指摘に反論した。
加藤大臣は、船内での区域分けは「しっかり行われている」と強調する一方、「船の上なので、通常の病院のレベルではないが、行われていた」と説明した。
(2020/02/20)
https://mainichi.jp/articles/20200220/k00/00m/010/113000c
神戸大教授の告発動画削除「政府は関与していない」 菅官房長官会見
毎日新聞2020年2月20日 12時49分(最終更新 2月20日 12時50分)
記者会見で質問に答える菅義偉官房長官=首相官邸で2020年2月20日午前11時25分、川田雅浩撮影
新型コロナウイルスの感染が拡大したクルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」に関する政府の対応をインターネット上に投稿した動画で批判した神戸大の岩田健太郎教授について、菅義偉官房長官は20日の記者会見で「災害医療派遣チームのメンバーとして船内に入っていただいたが、離れて別の形で動かれることは適切ではないとのことで下船をお願いした」と述べた。岩田氏は20日朝までにインターネット上に投稿した動画を削除したが、菅氏は「(政府は削除に)関与していない」と述べた。
岩田氏が「ぐちゃぐちゃ」と表現した船内のゾーニング(安全なエリアと危険なエリアの区分け)について、「感染管理の専門家が常駐し、ゾーニングも行っていた」と説明した。また、19日に岩田氏の事実誤認を指摘した高山義浩医師については「厚生労働省の参与で、現場で対応された方だ」と述べた。【秋山信一】
A copy of what Dr. IWATA Kentaro told in English
https://www.youtube.com/watch?v=bTenGhhHH4s
On 21st Feb. 2019, Dr. Takayama posted on the Facebook (now closed to
friends only)
高山義浩
2月21日 ?
Looking at the video of Dr. IWATA Kentaro (see comment), I thought the
video was just what he was supposed to do, and did not pay particular
attention. But, he seems to have come under fire.
The video must be too stimulating for people who do not know Dr. Iwata.
However, his video may put the passengers getting off the cruise ship
and those working hard in a difficult position. So, I will admit facts
as facts but would like to clear up some misunderstandings and provide
supplementary information as one that were mentioned in the video.
> I was removed from the ship on the same day.
This is true. More accurately, he was on board for less than two hours.
So, I understand that he only saw the situation around the lounge.
> Finally, one officer working for the Ministry of Health and Labor
> called me yesterday, saying “Well, you can come and enter into the
> cruise ship and do infection control work.”
This is me. But I didn’t say, ”You can come and enter,” since I do not
have the authority for that. However, I did say, ”Let’s consider how to
do that.” As the Japanese Society for Infection Prevention and Control
was working on this issue, I advised Dr. Iwata that I believed he could
enter if he applied through that Society. But Dr. Iwata said his
application was not acted on for some time and was ultimately rejected.
> Then, after several discussion, he found another way. “If you could
> come as one of the DMAT members, you can come into the cruise ship”.
This is me. I suggested this. DMAT stands for Disaster Medical
Assistance Team.
> Finally, the officer found a way. “If you work for the DMAT, not as an
> infection prevention specialist, but as an ordinary, routine DMAT
> officer working under a DMAT doctor and doing routine job, then you
> could come enter the cruise ship.”
This again refers to me, but I did not say “you could come enter” since
I do not have any authority over such matters. I just said, ”As long as
you are participating as a member of DMAT, do the work of the DMAT
exclusively. Do not point out anything concerning infection control from
the start. Once you build a relationship of trust, you will be able to
provide such advice.”
At that time, a limited number of staff was working hard on the
operations involved in getting the passengers off the cruise ship, and I
thought that Dr. Iwata might become disliked if he started to give
instructions right away. I thought that might lead to him being unable
to continue working on the ship. A cruise ship is a unique space. I
thought it impossible for him to give advice after only getting only a
brief glance at the operations underway.
Of course, I am very aware of Dr. Iwata’s wealth of experience. However,
the circumstances were quite unique as various organizations such as
DMAT, the Self-Defense Forces, and the Quarantine Station were carrying
out activities in a multi-layered manner. So, I asked Dr. Iwata to first
spend time getting accustomed to the situation.
> I said, “Fine, then I will get into the ship.”
In this manner, Dr. Iwata agreed to the terms I had set out.
> I found the chief officer of the DMAT and spoke with him. I said,
> “Well, I was assigned to a DMAT member and I’ll do whatever you want to
> see.” He said, ”Well, you don’t have to work DMAT work because that’s
> not your specialty and you are an infection prevention specialist. Why
> don’t you do the infection control?”
This is true. As a result of this comment, Dr. Iwata thought that he was
allowed to carry out activities for infection control. However, beyond
DMAT, many other organizations such as the Ministry of Health, Labour
and Welfare, the Self-Defense Forces, and also the captain and the
shipping company, have all been working on the cruise ship and their
decision-making processes vary. Dr. Iwata was unaware of the complexity
of the organization of operations and consequently disregarded the terms
he had agreed with me earlier. Had he at least consulted with me by
phone, I could have clarified the situation, but instead he started
giving advice on infection control to those organizations.
As a result, people on the front line got confused and ultimately he was
asked to leave the ship because of the confusion and impediments that
arose. I have no doubt that Dr. Iwata’s advice as an infectious disease
doctor was mostly appropriate, but a person cannot get organizations to
take action just by being right. It is most important to be trusted in
the process of crisis management, in particular.
> I never had fear of getting infection myself for Ebora, SARS and
> Cholera ... but inside the Princess Diamond I was so scared of getting
> COVID-19.
If this is how Dr. Iwata felt, then I would not try to claim he felt
otherwise. As a new infectious disease is spreading in an unusual closed
space such as within a ship, it would not be strange for anyone to feel
afraid. However, I would like everyone to understand that there are
people who have been working hard in this situation continuously.
Incidentally, I will be on the ship tomorrow as well.
There have been a number of problems to tackle. We have been making
headway step by step, and yet there remains room for further
improvement. We cannot run away as long as there are passengers on
board. We cannot let them get off or release them to their respective
communities or to the world until at least all operations are completed.
I myself am a doctor specializing in infectious diseases, so I
understand well the principle that protecting oneself is the top
priority. And yet, people working on the Diamond Princess for two weeks
have prioritized protecting Japan and the world over protecting
themselves, while supporting the passengers.
Dr. Iwata is free to criticize the Government of Japan for the current
situation aboard the Diamond Princess, but he should have avoided
paralyzing with fear those working on the ship by leaving without
offering solutions, given that the people working there cannot run away…
> ... It turned out the cruise ship was completely inadequate in terms of
> infection control. There was no distinction between green zone which is
> free of infection and red zone which is potentially contaminated by
> virus ... It was completely chaotic.
As an infectious disease doctor myself, I can understand to some extent
why he used the term ”chaotic.” However, this term causes the
misunderstanding that zoning was not in place at all. In reality, zoning
was and is in place on the ship, although not completely.
It is true that more sophisticated infection control can be implemented
in a hospital in an advanced country or in a medical center set up by an
NGO or an international organization in a developing country. However,
it is an extremely complicated mission to deal with a situation where a
new infectious disease emerged suddenly on a ship on which there are
approximately 3,700 crew members and passengers, many of whom are
elderly.
I have participated in NGO activities abroad and am now serving as the
director of an international NGO. No NGO or international organization
could have avoided some degree of chaos as operations first got
underway. I am not claiming that there was nothing that could have been
improved concerning the measures taken in the last two weeks, but I
think the people on the front line have done well so far.
> I spoke with head officer of the Ministry of Health and Labor and he
> was very unhappy with my suggestion of protecting DMAT people and other
> staffs so that no other second transmission would occur.
An infectious disease doctor is required to have ability as a
consultant, which means the ability to get his message across. When
someone does not listen to me, I do not blame the listener but instead
reflect on how my comments may have failed to be persuasive.
> There was no single professional infection control person inside the
> ship and there was nobody in charge of infection prevention as a
> professional. Bureaucrats were in charge of everything..
This is not correct. Various doctors specializing in infectious diseases
or public health have been on board every day providing guidance. I
imagine Dr. Iwata was not aware of this. But if his comment instead
means that the other specialists are not as professional as himself, I
am at a loss for how to reply.
===
So far, I have written about my reaction to Dr. Iwata’s video. There may
be some differences in our opinions and I may be wrong on some points.
If I have made any errors, I would be glad to have them pointed out.
Anyway, I am not calling into question Dr. Iwata’s intentions, and we
should review the advice he gave so that it can be reflected in future
measures taken for the cruise ship.
These have been our initial efforts and there must have been errors
along the way. If any facts have been concealed, such concealment would
betray the passengers, who have been cooperative, the crew members who
have conscientiously carried out their duties, and the members of the
Self-Defense Forces and medical staff who have come from all around
Japan to assist.
At present, Japan faces an outbreak of a new infectious disease and we
are at a critical stage of whether we can contain it or let it spread
nationwide. Unfortunately, Japanese have a tendency to avoid looking
squarely at a crisis facing them, instead concentrating only on
criticizing someone and assigning blame. I think we should focus even
more on working together during this time of anxiety and uncertainty.
1,829Kaoru Teramoto、他1,829人
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投稿者
高山義浩
岩田先生より昨日の私の投稿について、誤りについて修正していこうという建設的な提案をいただきました。もちろん、私が間違っているところは修正いたします。
併せて、先生の動画についても修正(再収録)をお願いしたいと思います。日本語版は削除いただいてますが、英語版は残されています。日本語版とは内容が少し異なりますので、こちらについての指摘を整理いたしました。
ご検討いただけますと幸いです。ただ、レスポンスが迅速でない可能性があります。その節はどうぞご海容ください。
高山義浩 なお、私が”You can come”という許可するかのような言い回しをしたかどうかは気にしません。
ただ、”There was no distinction between green zone which is free of
infection and red zone”における”no
distinction”については、ゾーニングは行われていたわけですし、せめて”inadequate”ぐらいにしていただきたい。大きな不安を乗客たちに与えますので・・・。
また、” There was no single professional infection control person inside
the ship and there was nobody in charge of infection prevention as a
professional. Bureaucrats were in charge of
everything.”については事実ではありませんので、やはり修正をお願いします。
岩田 健太郎 高山義浩 There was no distinction between green and red.
まごうかたなき事実です。まだお認めにならないのでしょうか。橋本議員がゾーニングの基本をご存じないことは理解しましたが、、、先生はもちろんご存知ですよね。別のところでも書きましたがぼくは英語版日本語版両方削除しています。間違いは正してください。
岩田 健太郎 高山義浩 Infection control persons in
chargeと申し上げていたと思います。指揮権や意思決定権を伴う感染対策チームという意味ですので、そこは話をすり替えないでほしいです。
岩田 健太郎
もう一点。inadequateならいいとのことですが、その一方で「しっかり」やっていて「完璧ではない」程度だともおっしゃっています。両者の乖離は大きいです。結局この問題は感染管理がちゃんと出来ているかどうかの「事実」の問題です。だれかが不安に思うとか、皆が混乱するとか団結が損なわれるとか・頑張ってる人に水を差すといった周辺問題は「事実」を曲げる根拠にしてはいけません。そうではありませんか。
これ以外は、他の方達のコメントのようですが、高山医師の次のコメントが途中にあります。
高山義浩
いやいや、そこは誤解があります。私は最下層の雑用係です。そして、岩田先生の才能に今でも期待する者です。だからこそ、適正な形でフィードバックいただき、船の感染管理に活かしていければと思っています。ただ、現場で働く人達を怒らせ、YouTube
で吠えても仕方ないでしょう。また、スナップ写真1枚でも、たった1日の滞在でも、船のことはわからないんです。