環境マネジメント論)安渓遊地担当の地域公開講義「ゴミ処分場がやってきた!」(2006/6/16)でお話すること
2006/06/15
環境マネジメント論 二〇〇六年六月十六日 午後6時から 県立大学F204の講義のあらましです。 (国際文化学部教員・安渓遊地)
「ゴミ処分場がやってきた!」――三十年前からアフリカやヨーロッパや南の島々に住んで「人と自然の関係」について勉強をかさね、やっと探し当てた理想ののどかな田舎。できるかぎり手作りの家を建て、田植えをする暮らしを始めて十年。そんな僕の村にゴミ処分場計画がやってきた。
1.アフリカの森で学んだこと――自給的な豊かさと内戦
資料 「物質過剰による北の世界の歪み」渡部重行、一九九五『共生の人類学』学陽書房
(添付ファイル1~3)
2.わが家の四季――いまあしもとでできることを楽しむ
資料 安渓遊地編『やまぐちは日本一』(正・続)弦書房(地域の方には一冊進呈)
3.「流域の思想」を生きる――行動が必要なとき
資料 屋久島の詩人・山尾三省の「遺言」、安渓遊地・貴子「『流域の思想』を生きる」
ウェブ http://ankei.jp http://niho.jp
資料2は、以下の部分から部分的に印刷して配布しました。
スペイン・ナバラの風に吹かれて(安渓貴子)
二〇〇五年は、スペインのナバラ州で五か月暮らしました。フランスとの国境のピレネー山脈の山裾に広がる、山口の一・五倍ほどの面積の自治州です。来てみて驚いたことがあります。ここは、再生可能エネルギーのショウウインドウといわれるほど、さまざまな取り組みをしています。そして、電力にしめる再生可能エネルギーの割合は、プロジェクトを開始してわずか十二年目の今年でほぼ七十%。二〇一〇年には、百%再生可能エネルギーへの転換を達成できるだろうというのです。
風力発電の大風車群が三十三カ所あって、合計で、九百メガワットの電力を供給しています。フランシスコ・サビエルが生まれたハビエル村(バスク語ではシャビエル村)はパンプローナからバスで一時間です。その道沿いにも風車が山の稜線にずらっと並んでいます。青い空に緑の山並み、その稜線に並ぶ何十という白い風車は、一幅の絵のようです。
それだけでなくハビエル村への途中の町サングエサにはバイオマス発電所があって、そこではなんと麦わらを発電に使っています。山口でも、里山の手入れを兼ねて竹や木のバイオマスとしての活用に熱いまなざしが注がれ始めています。そんな山口から出かけていった私ですが、パンにするための実をとった後の麦わらで発電ができるとは思ってもみませんでした。やれるものですね!日本では稲わらは厄介者として田んぼで燃やされるか、よくて田んぼにすき込むか、牛や羊の餌とばかり思っていました。それが三十七メガワットのプラントとして堂々と稼働しています。そして、ここが大切なところですが、地下資源を燃やさないので地球規模での二酸化炭素の削減にも寄与しています。この他に、太陽光発電や、小規模水力発電もさかんです。
電力だけでなく、植物油から年間三万トンのバイオディーゼル燃料を製造する工場もあり、町中のガソリンスタンドでも給油できるようになりました。「ぼくの車もバイオディーゼルだよ」と私のスペイン語の先生。四月末、畑を黄色に染めていたあの菜の花の種が油になり車を走らせることができるのです。これに使う植物油を生産するために三万ヘクタールの農地を活用しています。日本にも休耕田はたくさんあります。二酸化炭素を減らすためには原子力を増やすしかないという話がありますが、もっと手近で安全度の高いたくさんの取り組みが実は可能だったんですね。
私が暮らしたパンプローナでは市内から発電用の風車の列が見えます。環境をよごさず、再生可能で持続的なエネルギーは安全なのでこんなにも町の近くで作れる。近ければそれだけ送電のためのエネルギーの損失も少ないのです。また、エネルギーを逃がさない家の構造や素材、さらに節電の工夫など、実に多様な取り組みがあります。EU全体でもこれらを強力に推進しています。
ナバラ州と山口県は、最近姉妹提携をしました。州都のパンプローナ市と山口市は、二〇〇五年に提携二十五周年を迎えました。今は、市民が自由に国際交流し、また発言できる時代です。自分たちの地域の未来を、「いのちの声」に耳を傾け、世界の先進事例に学びながら、自分たちで描き、自分たちでつくろうではありませんか。それこそが、この山口の自然と風土を生かして、暮らしやすさでどこにも負けないと誇れるやまぐちをつくることであり、誰もが一度は訪ねてみたいと思うやまぐちにしていく道だと思っています。
《参考資料》
・安渓貴子のホームページ(http://ankei.jp/takako/ 論文や報告が読めます)
・上関原子力発電所建設計画に係る山口県知事意見(「知事意見」で検索すると出てきます)
・日本生態学会の要望書(「生態学会 自然保護」で検索).
山尾三省さんの「遺言」は
http://www1.neweb.ne.jp/wb/tetsuka/sansei-yuigon.html
http://www2.ocn.ne.jp/~art-h/omou.h/omou-005.html には、故人の写真ものっています。
安渓遊地・安渓貴子の「流域の思想を生きる」は
http://ankei.jp/yuji/?l=j&c=l&n=226
に掲載しました。