司法の現場を知り元気のでる本)中尾英俊『平成日本歩き録 入会と環境保全』(海鳥社)
2015/06/25
もと裁判官で学者の瀬木比呂志さんの書いた『絶望の裁判所』(http://www.amazon.co.jp/dp/4062882507)を読むと、日本の司法についてかなり悲観的になる。
弁護士で学者という人生を貫き、2014年12月に91歳で亡くなられるまで現役で、入会権を守るために東奔西走された中尾英俊さんに贈られた『平成日本歩き録 入会と環境保全』を読むと、不思議に勇気が涌いてくるのを感じる。日本の各地で、自分たちの足下の生活を守ろうとする人々の生き方が悠々迫らぬ筆致で書かれていてさわやかである。
上関の神社用地の入会権裁判で直接何度かお会いする機会があり、その魅力ある人柄と、気骨にいつも大きな励ましを感じたものだ(ブログ「省ちゃんの前向き語り」参照 http://gomenda4918.blog.fc2.com/blog-entry-280.html)。
この国の司法(入会権をめぐる裁判)をよみがえらせるための必読の入門書だと思う。以下、出版もとの海鳥社のサイトから引用する。
著者 中尾英俊
法は環境を守れるのか。
ダムや産廃処理場、原子力発電所・・・・昭和40年代以降繰り返されてきた開発=環境破壊。それを防ぐ武器としての入会権の行使。ふるさとの自然を守るために戦った人の声や、各地に受け継がれる文化・風習など、現地を歩き続けた約50年を綴る。
著者略歴
中尾英俊 ナカオ・ヒデトシ
1924年9月10日生まれ。1949年、九州大学法学部卒業。佐賀大学文理学部教授を経て1969年、西南学院大学法学部教授。1995年、定年退職。1997年弁護士登録し、福岡市内の弁護士事務所に勤務。現在、西南学院大学名誉教授、中国吉林大学客員教授。法学博士。著書に『入会林野の法律問題』(勁草書房、1969年)、『日本社会と法』(日本評論社、1994年)、『アジア・ヨーロッパ歩き録』(勁草書房、1990年)、『東アジア行く旅』(海鳥社、1999年)、『村からのたより 入会・家族・生業―変わる村々の記録』(海鳥社、1999年)、『入会権 その本質と現代的課題』(勁草書房、2009年)がある
目次
はしがき
昭和の記録―そして後日記
日本最北の地―九人の乙女とさようなら 北海道稚内市 昭和三十九年九月
平成日本歩き録
原発を拒否した町―誰も使うことができない土地 新潟県西蒲原巻町(現新潟市) 平成十五年一月
温泉をダムで沈めるなーやんばダムの行方は? 群馬県吾妻郡長野原町 平成十九年十一月
村からのたより 後日譚
風力発電と保安林 福岡県三方郡美浜町新庄 平成二十一年一月
(一部抜粋)
平成日本歩き録
四六判 上製/274頁
定価 2592円(本体2,400円)
ISBN 978-4-87415-859-3
C0095
2012年9月発行
ご注文は、海鳥社へどうぞ。
http://kaichosha-f.co.jp/books/society/1543.html
海鳥社は、博多の出版社です。良い本をいろいろ出していますよ。http://ankei.jp/yuji/?n=200 とか。