日本生態学会・上関原発要望書についてアフターケア委員会報告
2006/05/14
日本生態学会の自然保護専門委員会への報告の写しです。
上関原発に関する自然保護の要望書のアフターケア委員長としてとりまとめて、
2006年3月末の大会で報告しました。
以下引用
上関原子力発電所要望書アフターケア委員会2005年度活動報告(2006年3月)
アフターケア委員長・安渓遊地(自然保護専門委員)
協力:長島の自然を守る会代表・高島美登里(生態学会会員)
目次
0.はじめに
1.活動のあらまし
2.詳細調査の動向とその影響
3.予定地をめぐる裁判から
4.資料
0.はじめに
アフターケア委員長の安渓遊地が、委員の一人の安渓貴子とともに、2005年4
月19日~9月20日までスペイン・ナバラ自治州に滞在して不在であったため、自
然保護団体「長島の自然を守る会」の協力によって、上関原子力発電所予定地を
めぐる自然保護の状況を報告する。
原発予定地とされる長島の貴重な自然が、2005年4月に着手された「詳細調査」
と称するボーリング等により、大きなダメージを受けている、という残念な報告
が主体であるが、多くの研究者と市民の参加により、現地調査と県・国、事業者
への申し入れなどの自然保護活動が盛んに行われている。アフターケア委員会と
しても、調査や申し入れにはできるだけ同行し、生態学会としての立場からの発
言をおこなった。
◎長島の自然を守る会 プロフィール
1999年9月に、上関原発計画の環境アセスメントの不備を追及し、予定地であ
る長島の貴重な自然環境と生態系を保全することを目的に8名の有志で結成した。
生態学会などの研究者と連携し、現地調査を通してその価値を科学的に検証し、
上関原発計画の中止を中国電力や各行政機関に申し入れると共に、自然と共生す
る町つくりを目指し、スナメリウオッチングツアーなども取り組んでいる。現在、
会員は約120名。
会員には、会長の高島美登里氏を始め、日本生態学会の会員も多い。
活動は、会費・カンパおよび、最近は高木仁三郎基金からの助成を継続して受
けている。
1.活動のあらまし
2004年末の活動
11月14日 海岸クリーン作戦
12月25日 冬季調査と海水汚濁度調査(湯浅一郎)
2005年
1月19日 長島の自然を守る会山口県と中国電力への申し入れ
2月3日 長島の自然を守る会の山口県と中国電力への申し入れに同行
アフターケア委員会として、意見をとりまとめて、中国電力および山口県庁に
持参した。
3月28日 公募シンポ「大規模開発につける薬(2)--いま生態学者にで
きること」第52回日本生態学会研究大会(大阪)の中で、上関の状況をめぐる研究
発表(野間直彦・安渓貴子)と討論(河野昭一・金井塚務)司会、安渓遊地
参加者数約250名
4月2・3日 春季調査・海水汚濁度調査(安渓遊地・安渓貴子・湯浅一郎・
向井宏・河内直子)
5月4・5日 春季フィールドワーク(山下博由・秋山貞・向井宏・河内直子)
24・25日 現地調査(横浜康嗣・山下博由)
29日 スナメリウオッチングとビワ狩り
6月20日 長島の自然を守る会の山口県と中国電力本社への申し入れ
◎詳細調査中止署名の提出(122,581筆)
◎ナガシマフィールドガイド完成記者会見
6月26日 キノコ教室(山田詳生)
7月23・24日 夏季フィールドワーク(山下博由・佐藤正典・金井塚務)
8月27日 ベントス学会現地調査(岩崎敬二)
9月4日 現地調査
9月15日 長島の自然を守る会の山口県と中国電力本社への申し入れ
10月8日 キノコ教室(山田詳生)
10月15・16日 秋季フィールドワーク(安渓遊地・安渓貴子・野間直彦・向井
宏・河内直子・加藤真・花輪伸一・湯浅一郎)
11月2・3日 現地調査
11月14日 貝類調査(山下博由)
11月16日 長島の自然を守る会 国への申し入れ(東京)
11月27日 シンポジウム「詳細調査で危機に瀕する長島の自然」
パネラー;向井宏(北海道大学北方フィールド圏センター)
加藤真(京都大学大学院)横浜康嗣(志津川町自然環境活用センター)中根周歩(広
島大学)金井塚務(広島フィールドミュージアム)山下博由(貝類保全研究会)佐藤
正典(鹿児島大学)西濱士郎(日本ベントス学会自然環境保全委員会委員・(独)水
産総合研究センター)湯浅一郎(環瀬戸内海会議)
12月23・24日 海水汚濁度・鳥類標識・魚類調査(湯浅一郎・梶畑哲治)
12月29・30日 鳥類・潮間帯調査
2006年
1月28・29日 鳥類・潮間帯調査
2月11・12日 鳥類・潮間帯調査
2月25・26日 鳥類・潮間帯調査
3月11日・12日 鳥類・植物調査・湧水の予備調査(菊池亜希良・安渓貴子・安
渓遊地)
今後、3月中に2回の調査に引き続き、ゴールデンウィーク、夏季調査などを行
ない、現地調査、環境学習、事業者への監視を強めていく予定である。
2.詳細調査の動向とその影響
◎上関原発予定地の詳細調査をめぐる動きについて
ボーリング調査などを主体とする「詳細調査」の開始については、ずさんなア
セスメントに基づいて着手することは許されないとする決議を、日本生態学会中
国四国地区会として決議した(2003年5月13日)ところであるが、中国電力は、陸
域ボーリングを2005年4月13日に開始し、さらに海域ボーリングを2005年6月20日
に開始しようとしたが、祝島漁協の漁船多数を中心とする阻止行動により、6月
23日までの丸3日間、作業ができなかった。
2005年9月15日、中国電力、詳細調査でボーリング汚水の垂れ流しが発覚
中国電力が陸上で行っている詳細調査におけるボーリングで、事前に提出した
環境保全計画では作業に伴い出る汚水を循環させる計画が、実際は沈殿させるだ
けでそのまま垂れ流していたことが明らかになった。
このため、山口県が中国電力に詳細調査の中断を命じ、
9月26日、中電はお詫びの文章を新聞チラシで上関町内に配布。
9月28日の県議会における小中議員の質問に対しては、知事は、「計画に沿っ
て調査が行われることは当然と理解していたが甘い判断だった」と答え、綿屋副
知事は、県が主体的にチェックすべきところを長島の自然を守る会に指摘される
までチェックできなかったことはたいへん恥ずかしいことであるとし、調査再開
については、今後の中電側の対応を見て判断するとした。
県庁内に、県職員による「監視チーム」設置。
2005年10月27日、「長島の自然を守る会」田ノ浦に天然記念物の「カラスバト」
が生息することを発表
長島の自然を守る会が県に申し入れを行い、その中で上関原発建設予定地の田
ノ浦で国の天然記念物である「カラスバト」が目撃されたことを報告した。さら
に、その調査が終わるまでは詳細調査再開の許可を出さないよう求めた。
2005年11月15日、山口県は、詳細調査の再開を許可する方針を表明。
2005年11月16日、「長島の自然を守る会」海域ボーリングによる、濁水垂れ流
しの可能性を指摘して、海域の詳細調査の中止を県と中電に要請。
3.予定地をめぐる裁判などの動き
◎原発予定地の共有地裁判の動き
原発予定地の炉心にかかる場所にある四代地区共有地を、中国電力が提供する
別の土地と交換する契約の無効と入会権の確認を申したてる、四代地区の反対派
住民が原告となっている訴訟は、1審では入会権を理由に、共有地の木を伐った
り、土地を造成したりすることを禁ずる判決だった(2004年3月)。原告と被告側
の中国電力の双方が控訴して、入会地としての利用の実態があったかどうかを争
点に、広島高裁で争われた2審の判決は、被告の逆転敗訴となった(2005年10月20
日)。ただし、生態学会会員を中心とする研究者の調査と研究による、利用の実
態があったことを証明する証拠をほぼすべて認め、利用はなかったことを立証し
ようとした中国電力側の学者による論拠を認めなかった。ところが、判決理由は、
「入会権が地益権に変化したこと」と「地益権の時効による消滅」というまった
く争点にならなかった論拠を持ち出したもので、相撲の試合に例えれば、試合の
最中に行司が軍配で殴りかかってきたような判決だった。
原告側は、11月2日、最高裁に上告した。(以下の資料は、
http://www5d.biglobe.ne.jp/~jf-iwai/hantaiundou.htmからの抜粋)
判決 主文
1 1審被告らの控訴に基づき、原判決主文第1項中1審被告らに関する部分を、
1審被告中国電力の控訴に基づき、原判決主文第2項をそれぞれ取り消す。
2 前記取消部分につき、1審原告らの請求をいずれも棄却する。
3 1審原告らの控訴を棄却する。
4 訴訟費用は、第1、2審とも1審原告らの負担とする。
特に重要なのは1の「原判決主文第2項をそれぞれ取り消す」で、これはすなわ
ち「原告らの入会権を認めず、当該地での中国電力による木の伐採や造成を禁じ
た部分を取り消す」ということです。
主な判決内容(要旨)
1 入会権の成否
本件各土地は明治22年から25年ころにかけては四代部落の住民から入会的使用
収益の慣行が存在したと推認するのが相当。
原告らの主張から昭和30年代ころまで四代部落の住民は海産加工品の生産、家
庭用燃料等に利用するために薪炭を採集して利用していた事実を認めることがで
き、被告らの反論(急傾斜地で人は立ち入れない、萌芽の原因は伐採ではない等)
は理由がなく、明治期から昭和30年代ころまで四代部落の住民が本件土地を入会
地として利用していたことが推認されるというべき。
2 四代区について
明治24年に上関村で財産区を設けるべく区会条例が制定されたが、内務大臣に
許可されず財産区は設立しなかったが、上関村において明治22年から区会、区長
制度は存続し、現在もなお継続している。
四代区は法律上の財産区ではないが、明治24年10月ころに四代部落の住民団体
として権利能力のない社団である四代区が成立し、四代区の設立により四代部落
の保有していた財産は四代区の財産になった。
四代区の部落有財産保持という設立目的、四代区がその財産を処分してきたと
いう事実、その際部落の全住民の同意を経た形跡がうかがえないことを総合すれ
ば、四代区設立のときに本件各土地を含む四代部落の土地を所有し、管理処分す
る権限は四代区に帰属したと解するのが相当。
3 本件各土地の権利関係
四代区成立前は、実在的総合人である四代組と四代部落住民が共有の性質を有
する入会権を有していたと認められるが、四代区成立後は、四代区に所有権が帰
属した以上、四代部落住民の有していた入会権は共有の性質を有する入会権から、
共有の性質を有しない地役の性質を有する入会権へと変化したとみるのが相当で
ある。
被告らは、本件各土地を入会地として使用収益せずに既に40年以上が経過して
いるから入会権は既に消滅した旨主張するが、共有の性質を有する入会権につい
ては所有権が時の経過では当然には消滅しないとの法理論から失当といわざるを
得ない。しかし地役の性質を有する入会権は、地役権の法理に従うから、消滅時
効の法理に服するべきである。
本件各土地においては入会慣行は徐々に行われなくなり、遅くとも昭和50年こ
ろには使用収益する者がいなくなったと認められるから、四代部落住民各人が有
していた地役権の性質を有する入会権は現在では時効により消滅したと見るべき
である。そのため(入会権を基にした)原告らの請求はいずれも理由がない。
4 本件交換契約の有効性
四代区は権利能力のない社団であり、その所有する財産は社団構成員(四代区
住民)の総有に属すると解されるが、当該社団(四代区)においてその所有財産の
管理処分方法を規約や慣行等で定めている場合、その管理処分はその定めるとこ
ろによると解するのが相当。
四代組名義の土地を平成8年に道路用地として上関町に売却したときは役員会
の決議に基づいて実行したことを認めることができ、それ以前の譲渡においても
住民全員の同意を得てなされたことうかがわせる証拠はなく、四代区所有の財産
を処分するには役員会の決議によることが慣行であったと認められる。
本件土地を被告中国電力と交換するについては四代区の代表者である被告山谷
良和が四代区の役員会の全員一致の決議に基づいて本件交換契約を締結したので
あるから本件契約は有効であるといわなければならない。
5 結論
以上の通り、原告らの請求はすべて理由がないから原判決(岩国地裁の判決)の
うち、原告らの請求を容認した部分は失当であり、棄却した部分は相当である。
原告の一人、竹弘さんは次のように語った。
・高裁での主な争点は「土地が入会地として使われてきたかどうか」であり、そ
の点については原告の主張がほぼ通ったのだが、争点となっていない所から唐突
に判決が出された。杞憂かと思っていたことが現実となってしまった。
・1審で被告が途中で主張しきれなくなり、少なくとも高裁では表立って主張し
なかった点を重要な判断の根拠として裁判所は採用したが、それならば裁判所は
その点について公判中に原告・被告、互いの主張をたたかわせるべきだった。
・中電は「当該地は入会地ではなく、原告らにも入会権はない。仮にあったとし
ても消滅している」とは主張していたが、「『時効』により消滅」とは主張して
いなかった。裁判所は被告である中国電力の主張をこえて中国電力寄りの判決を
出した。最初から結論ありきで、どうやってそこへ着地するか頭をひねって出さ
れた判決としか思えない。
◎漁業補償無効確認訴訟、結審
祝島漁協が上関原発問題に絡んで中国電力と共107号管理委員会が結んだ漁業
補償契約の無効を訴えた訴訟が9月29日結審。判決は2006年3月23日に出される予
定。
◎宮司地位保全、神社地仮処分をめぐる訴訟
8月24日、原発予定地として神社地を売却することに反対して解任された林宮
司の地位保全、神社地仮処分の審尋。
林宮司の地位保全と、神社地の移転登記抹消・現状変更禁止を求める審尋がそ
れぞれ行われました。
地位保全の審尋では、裁判所から宮司の解任理由を明らかにするよう再三促さ
れていた神社本庁側が自身の判断は明らかにせずに、平成13年に四代八幡宮の責
任役員らに提出させた「回答書」を提出しました。林宮司側はこの「回答書」に
ついては虚偽の部分があることや、解任にいたるまでの正当な手続きがなされて
いないとしている。
神社地の仮処分については、入会地であるか否かが争点となっています。
また、林宮司の退任届けが偽造されたことについて山口地検に告発がされてい
る件については、いまだに「捜査の中止」扱いとなっているとのこと。
(引用終わり)
◎祝島漁協は、合併しない方針を経済的な理由で転換(中国新聞地域ニュース)
祝島漁協、山口県漁協に加入へ ’05/11/28
山口県上関町の祝島漁協(山戸貞夫組合長、八十九人)は二十七日夜、臨時総
会を開き、同県内の漁協合併で発足している県漁協(田中伝組合長)への加入を
賛成多数で決めた。
中国電力の上関原発計画に反対している祝島漁協は原発関連訴訟を継続中で、
これまでは法人格維持のため合併に参加していなかった。しかし、同漁協が原告
となっている訴訟の山口地裁岩国支部の判決が来年三月二十三日に出される見込
みとなった。従来も事業の安定化には組織拡大が必要との判断などもあり、判決
後の同年四月一日付で合併することにした。
山口県内に五十八あった漁協のうち県漁協への加入はこれで四十五漁協となっ
た。(島田俊之)
◎祝島漁協は、合併にあたり解消すべき2200万円の負債を、組合長の借金
によって支弁することを決定。
11月末の総会では、祝島漁協が受け取りを拒否して供託中で、近く国庫に没収
されることが決まっている、中国電力の環境影響調査への迷惑料をあてようとす
る意見がいったん通ったが、女性達の反対により、中国電力の金はもらわないこ
とをあらためて確認した。以下のカンパのお願いが出されている。
①上関原発を建てさせない祝島島民の会からの訴え
--------------------------------------------------------------------
(転載歓迎)
祝島の漁民・島民がこれからも上関原発反対運動を続けられるよう、ご支援・
ご協力をお願いします
【はじめに】 上関原発建設計画が表面化して以来、24年を超えました。この間、
祝島漁協組合員・家族をはじめ祝島島民は自らの仕事や生活を犠牲にし、様々な
不利益を甘受しながらも反対運動の中心になって闘い続けてきました。
【漁協合併にいたる経過】
全国的にも漁協合併の動きが進む中、山口県も例外ではなく、多大な負債を抱
える信漁連問題もあって、その動きは急速に強力に推し進められてきました。
従来、祝島漁協は反原発運動の支障となるため合併には加わらないという姿勢
を続けてきました。
しかし、組合員の平均年齢70歳という高齢化の進行と近年の不漁、魚価低迷と
いう苦境の前に、漁協経営は不振を極め、過去数年間は大幅な欠損金を出すとい
う事態に陥り、単独での漁協の維持・存続自体が困難になってきました。
事ここに至って、組合員の今後の営漁および生活のために、総会において合併
やむなしという結論に達しました。
【新しい問題の発生】
ところが、合併に加わるためにはその前に現在抱えている負債を解決すること
が条件となっています。財政的に余裕のない漁協、組合員にとって総額2000万円
を超える負債等を解決する資金を負担する事は、大変困難です。
そこで、苦渋の選択として10年前に上関原発環境影響調査が強行された際、受
け取りを拒否して法務局に供託されている中国電力からの迷惑料2200万円を使わ
ざるを得ないという決定を一旦はしました。実は、実際に祝島漁民が多大な迷惑
を受けた環境影響調査は、法的にも終了し、供託金も平成17年末で10年の期限が
来て国に収納されることになっていたのです。
しかし、やむなく迷惑料を使うことを決めた後も、漁協の組合員や家族の中に
は、本当にこれでいいのかと心に引っ掛かりを持つ人も数多くいました。
【中電からの金を使わず、負債を解決するために】
そのうち組合員やその家族を中心に島民の有志が集まって相談が始まり、この
迷惑料を使うことが24年以上続いている上関原発反対の闘いに大きな支障になる
との判断のもと、漁協組合員が今後とも従来どおり行動していくためには、中電
の金を拒否したほうがいいとの結論に達しました。また、この話を聞いた他の組
合員や家族からも、中電の金を使わないならそれにこしたことはないとの意向が
広がりました。
その結果、あらためて祝島漁協は総会を開いて中電の迷惑料を使う決議を撤回
しました。
しかし、負債を解決する資金が必要なことに変わりはありません。
そこで、漁協・組合員という枠を外してみんなで必要な資金を集めようという
ことになりましたが、合併期日は平成18年4月1日です。それまでに必要な資金が
確保できるかといえば、確証はありません。
そのため、島の責任者の個人借り入れという形で当面対処し、長期にわたって
みんなの手で返済していこうということになりました。
【どうかお願いします】
私達は全力で資金確保、借入金返済に取り組みます。また、心ある皆様方のご
協力を仰げたらと願っています。
本来、大変勝手なお願いだという事は重々承知していますが、事情ご賢察のう
え、ご支援いただければ幸いに存じます。
どうか、上関原発反対運動に今後とも島ぐるみで取り組むことが出来るために
も、ご支援、ご協力のご検討のほどよろしくお願いいたします。
平成17年12月
〒742-1401 山口県熊毛郡上関町大字祝島
上関原発を建てさせない祝島島民の会 運営委員一同
連絡・問い合わせ先: 電話 08
20(66)2206 (清水)
FAX 0820(66)2828
携帯 090(3637)0830
【郵便振替】01390-4-67782 祝島島民の
会
--------------------------------------------------------------------
②脱原発大分ネットワーク事務局長・大原洋子さんからの訴え
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(転載歓迎)
まず、①の祝島からの遠慮がちな要請をごらんください。24年の長きにわた
って闘い続けてこられた祝島の方々に、私たちはどれほど感謝しても足りません。
くどいようですが、大分からも再度呼びかけます。ぜひ皆さんの暖かいお気持ち
をお寄せください。
【原発のお金はいりません!「祝島の心」を支える支援カンパにご協力ください】
脱原発大分ネットワーク代表 小坂正則
上関原発建設計画(山口県)が浮上して以来、24年にもわたり、一切の「原
発マネー」を拒否して反対運動の先頭に立って闘い続けてきた祝島漁協が、いま、
経済的な大ピンチに陥っています。
漁協組合員の高齢化(平均70歳)に加えて、不漁、魚価の低迷という悪条件
の中で、漁協の経営はここ数年、大幅な赤字決算となりました。今年1月に県一
漁協への合併を総会で拒否したものの、今年度も厳しい状況が続き、11月には
組合員の生活を守るために合併の決議をせざるを得なくなっていました。
さらに、来年4月1日の合併までに、漁協の負債(2000万円を超える)を
返済しなくてはならず、11月の臨時総会ではこの負債解消のために、中国電力
から支払われた環境影響調査(すでに終了)の迷惑料2200万円の受け取りを
決議しました。
10年前に受け取りを拒否して法務局に供託した迷惑料が、12月末に時効を
むかえて国庫に没収される予定であり、「国策に苦しめられたうえに、国に取ら
れるくらいなら赤字補填に」という苦渋の選択でした。
しかし、その後、漁協組合員やその家族、島民の中から、「原発の金は一円た
りとも受け取らぬ!」「祝島の反原発運動を貫くべきだ!」という意見が多く出
され、漁協は再度12月15日に臨時総会を開いて、供託金の受け取り決議の撤
回を決めました。
しかし、負債を解消する資金を、組合員が負担するのは、無理な状況なので、
とりあえず山戸貞夫組合長が個人として借り入れて穴埋めし、返済については、
漁協という枠をはずして、みんなで資金を集めることになりました。
5億4千万円の漁業補償金を初め、一切の原発マネーの受け取りを拒んで、自
前で24年にわたる反対運動を続けてきた祝島の人たちの「反原発の心」…物や
金に動かされない毅然とした生き方に胸が熱くなります。金を持つ者が幅をきか
せ、弱い者が切り捨てられていく世情の中、祝島の人たちの決断に、私たちは深
く共感しました。「祝島の心」を応援するカンパを皆さんに呼びかけます。全国
各地からのカンパが祝島の人たちの大きな励ましになります。ぜひ、周りの方に
一人でも多く声をかけてください。お願いします。
《連絡先》脱原発大分ネットワーク事務局長・大原洋子
電話/FAX 0978-63-0113
《振込先》祝島島民の会
郵便振替 01390-4-67782☆「漁協欠損金カンパ」と書いてくだ
さい。
☆ 2月末までに2200万円を目標に山口、大分など全国で取り組みます。
◎町議選の結果、反対派が1議席へり、推進派が1議席増えた(中国新聞地域
ニュース)
推進派9人全員当選 上関町議選 ’06/2/14
中国電力の原発建設計画を争点とした任期満了に伴う山口県上関町議選(定数
一四)が十二日、投開票され、原発推進派が多数の議会構成は変わらなかった。
推進派は立候補した九人全員が当選し前回の八議席を上回った。六人が立った反
対派は五人が当選したが、一議席減らした。
新町議は全員が無所属。内訳は、推進派が現職七人、元職二人。反対派は現職
二人、元職一人、新人二人となった。一九八二年に原発誘致が表面化して以降、
六度目の改選。今回を含め、すべて推進派が過半数を占めた。
立候補者は過去最少の十五人だった。推進、反対派別の得票は、推進派は二千
四十三票で65・5%、反対派は千七十六票で34・5%。ほぼ前回と同じ比率
となっている。
当日有権者数は三千五百七十四人。投票率は過去最低の88・11%(前回9
3・17%)だった。(島田俊之)
住民のための施策を
柏原重海・上関町長の話 新議員は、地域の代表など選出の母体はさまざまと
なっている。原発計画への賛否だけをとらえた結果分析はできない。推進、反対
両派は、互いに譲り合い、住民のためになる施策を考えてほしい。
実現へ最大限の努力
中国電力の福本和久取締役電源事業本部上関原子力立地プロジェクト長の話
選挙の結果を、直接コメントする立場にない。引き続き、町民の皆さまから理解、
協力をいただきながら、原発の実現に向け最大限の努力を重ねていきたい。
新人2人当選し健闘
上関原発を建てさせない祝島島民の会・山田建夫運営委員の話 現職一人が落
選したのは残念。だが、新人二人が当選し健闘したといえる。祝島を中心に、依
然として反対は根強い。今後も力を結集して運動を展開したい。
▽「具体的振興策」望む声 投票率過去最低の88・11%
中国電力の原発建設計画を争点に、十二日投開票された上関町議選(定数一四)
は十五人が争い、十四番目の議席には推進派が二票差で滑り込んだ。推進派は九
人全員が当選。六人が立候補した反対派は五人の当選で、前回より一議席減らし
た。投票率は88・11%で過去最低となった。一九八二年に原発誘致が表面化
して以来、賛否を前面に繰り返された選挙戦。町民から「もっと具体的な町の振
興策を示してほしい」と、切望する声が上がった。
四選を果たした外村勉さん(62)は今回、反対派から推進派に転じた。「過
半数の町民が、原発誘致による町の活性化を望んでいる。豊かな古里を残すため、
推進の道を選んだ」と強調。「原発の財源で、観光振興などに取り組みたい」と
抱負を語った。
反対派新人の平岡隆嗣さん(75)は、当選を決めると支持者らに深々と頭を
下げた。「これからの時代は、原発に頼らず、風力、水力、太陽光など自然のエ
ネルギーを使っていくべきだ。安全で、安心に暮らせる町をつくっていきたい」
と決意を述べた。
投票率は、過去最低だった六六年の88・90%を下回った。原発構想浮上後
では、無投票だった九八年を除き、初めて90%を割った。
投票率が下がる中、祝島投票所は96・13%。町内十二投票所の中で、前回
に続きトップだった。祝島漁協組合長で、返り咲きを果たした山戸貞夫さん(5
5)は「高い投票率で、反対の拠点である島の力を示した。町内には根強い反対
がある。力を結集して、元気な町づくりに取り組みたい」と話す。
推進派の町づくり連絡協議会の井上勝美事務局長(62)は「二十四年たって
も、生活が豊かにならないという有権者のいらだちが表れた。議会は町づくりの
具体的な論議を急いでほしい」と求める。
同町室津、建設業田中潔さん(49)は「町内に働く場が少ないので、若者は
流出する。雇用の場を確保してほしい」と期待する。祝島の無職山根善夫さん
(56)は「原発に頼らない町政を実現してもらいたい」と望んだ。
4.資料
A 長島の自然を守る会・高木基金報告書(2005年度)
http://ankei.jp/yuji/?l=j&c=a&n=201
高木基金のホームページにオリジナルがあります。
http://www.takagifund.org/05/r2005/02-42.pdf
B 詳細調査によるダメージを知らせる文書
http://ankei.jp/yuji/?l=j&c=a&n=202
C ホームページ上の情報
安渓遊地・貴子のホームページ
上関原発)2005年1月14日「詳細調査の環境保全」計画が県庁に提出されました
http://ankei.jp/yuji/?l=j&c=a&n=49
上関)詳細調査をめぐる意見(2005年3月2~4日、中国新聞の山口版)
http://ankei.jp/yuji/?l=j&c=a&n=60
上関)詳細調査をめぐって中国電力と一問一答(2005年2月3日)
http://ankei.jp/yuji/?l=j&c=a&n=63
その他、
http://ankei.jp/yuji/?l=j&c=a&n=77
http://ankei.jp/yuji/?l=j&c=a&n=80
http://ankei.jp/yuji/?l=j&c=a&n=89
長島の自然を守る会のホームページ
http://www2.ocn.ne.jp/~haguman/nagasima.htm
D 現地調査でボーリング漏水を確認した向井宏教授のコメント
2003年から2005年まで4度、田ノ浦に潜水していますが、これまでに比べて明
らかに田ノ浦の水中の環境には、ボーリング調査の影響と思われる変化が見られ
ます。
まず第一に指摘できるのは、底質が砂の上に細かい粒子のシルト分が表層に堆
積しているのが見られることである。このようなシルト分は表面以外にはあまり
なく、表面だけに堆積しており、ごく最近の変化を物語っています。ボーリング
調査が行われる前にはこのあたりの海底は淘汰度の良い砂質の海底でした。今は
細かいシルトを底質表面にかぶっています。その一つの傍証として、前回までほ
とんど見られなかった歪形ウニのカシパン類が非常に多くこの海底に見られたこ
とがあげられます。このカシパン類は砂質から泥質にうつるいわゆる泥線に多く
分布することが知られており、過去にあまり見られなかったこのグループの動物
がこの海底に多数集合していることは、細かい泥の粒子が最近増えていることを
示しています。
第二に、周辺の海藻藻場(もば)に多くの浮泥が積もっていて、海藻の多くが浮
泥による影響を受けていると思われることです。このことは、潜水していて藻場
周辺の透明度が非常に落ちていることを体感したことからも推測できます。これ
までこのような現象はありませんでした。この原因も、最近行われたボーリング
調査の影響と考えるほかありません。
これらの事実から、ボーリング調査が、中国電力が県に提出した環境保全計画
書どおりに行われていないことが考えられました。そのため、私達は、潜水調査
の際に、ボーリングのパイプの部分の潜水観察を行いましたが、その結果、ボー
リングの刃先を冷やすための循環水がボーリングパイプから噴出することを防ぐ
ための「セメントパテ」が非常に簡単な構造ともろい作りであり、現実に破損し
ていることを発見しました。この破損部分から明らかに海中ボーリング調査にお
いても、循環水が海水中に垂れ流しになっていたことが明らかです。したがって、
上述したような田ノ浦の海中の生物の生存に重大な影響をおよぼす異変が、この
ボーリング調査の杜撰な工事によって起こされていたことが明白であると思いま
す。
向井 宏(北海道大学北方生物圏フィールド科学センター教授)
E 中国電力(株)が2005年1月14日に山口県庁に提出した「上関原子力発電所
(1,2号機)建設に伴う詳細調査の環境保全について」に関する見解
(http://ankei.jp/yuji/?l=j&c=a&n=61)
日本生態学会・上関原子力発電所要望書アフターケア委員会
中国電力株式会社が2005年1月14日に山口県庁に提出した「上関原子力発電所
(1,2号機)建設に伴う詳細調査の環境保全について」(以下「詳細調査 の
環境保全」と略記)に関する、日本生態学会自然保護専門委員会内に設置された
上関原子力発電所要望書アフターケア委員会の見解を述べる。
まず、予定している詳細調査の「内容は他地点での調査をはじめ一般の事業
において広く実施されているもの」であるから、問題はない、との前提が示され
ているが、これは上関原子力発電所予定地の自然の特異な価値を認識していない
前提であり、とうてい受け入れることができない。
ついで、「詳細調査と同様の調査は、既に平成6年から8年にかけて上関地点
立地環境調査として実施しており、適切な環境保全措置のもと周辺環境は良好に
維持されている」としているが、今回の詳細調査と立地環境調査の規模や具体的
実施場所の違いを示すことなくそのように結論することは、何ら科学的説得力を
もつものではない。
続いて、陸域におけるボーリング調査、地震観測、試掘穴調査、弾性波探査、
地表地質調査、海域におけるボーリング調査、弾性波探査、音波探査の合計8種
類の調査を約2年間かけて実施するとして、それぞれの概要を示し、調査によっ
て想定される環境影響を記すとともに、水質と動植物に対する「環境保全措置」
を付け加えている。
その「環境保全措置」は、いずれの調査についてもほとんど同じであり、まっ
たく具体性を欠いた形式的な物である。例えば、「土地の形状変更および樹木の
伐採範囲を必要最小限にとどめ」「作業者には、計画地点で確認された貴重な動
植物などの概要と注意事項を記載した『ハンドブック』を携帯させ、調査工事中
に貴重な動植物が発見された場合には適切な措置を講じるよう指導する」として
いる。しかし、『ハンドブック』なるものの内容が不明であり、生物調査の専門
家でもない作業者が動植物を適切に同定できるとはとうてい考えられず、また、
「適切な措置」の内容も明らかにされていない。
また、「作業区域内において貴重な昆虫類を確認した場合は、昆虫類を作業区
域外に移動する」「土地の形状変更を行う場所において貴重な植物を確認した場
合は、適切な場所に移植する」など、多くの昆虫が食草や訪花などを通して、特
定の植物種と深く結びついて分布すること、植物が特定の環境条件のところにし
か分布しないこと、ほとんどの季節に地下部だけで存在しているレッドデータ種
があることなど科学的観点を無視した「保全対策」が述べられているだけである。
海域においては、「スナメリ」と「カクメイ科貝類」のみが注目すべきものと
していることが問題である。スナメリの場合は、「作業区域外に出るまで注視を
続け」「既にカクメイ科の貝類が確認されたタイドプールでは調査を実施しない」
としている。これは、ボーリング等の予定地の詳細が明らかにされなければ、ス
ナメリに及ぼす影響が不明であることと、カクメイ科の貝類が台風などによる生
育環境の変化にともなって生活の場を移動しているという事実を無視した「保全
対策」である。
このように、「上記のとおり個々の調査に応じた環境保全措置を講じることに
より、周辺環境は適切に保全され、詳細調査による環境への影響はほとんどない
ものと考える」という結論部分は、検証可能な根拠をもつものではない。
結論として、(1)調査の内容が具体的に示されておらず、予測される影響評
価も不十分かつ科学性を欠いている。(2)環境保全計画は、現地の希少種およ
びその生活を支えている生態系そのものの重要性に対する認識が欠落している。
(3)不十分で科学的根拠のない環境保全計画に基づき、詳細調査が実施される
ならば、現地の希少種を始めとする生態系の被る被害は計り知れない。したがっ
て、詳細調査の実施予定地の詳細を公表するとともに、科学的根拠に基づく計画
の全面的な見直しおこなうこと。
以上
参考:上関原子力発電所計画をめぐる日本生態学会の見解と要望
日本生態学会および日本生態学会中国四国地区会は、中国電力(株)が、山口
県上関町長島田ノ浦地区に計画している上関原子力発電所(1,2号機)建設計
画に関して、これまでに以下の6回の要望を、事業者および関係省庁、地元自治
体に対しておこなってきた。
1.「上関原子力発電所(1,2号機)建設予定地の自然の保全に関する要望
書」(2000年3月25日、日本生態学会総会決議)。
2.「上関原子力発電所に係る環境影響評価中間報告書に関する見解」(2000
年11月16日、日本生態学会中国四国地区会の見解)。
3.「上関原子力発電所(1,2号機)に係る環境影響評価についての要望書」
(2001年3月29日、日本生態学会総会決議)。
4.「中国電力(株)上関原子力発電所1,2号機計画の総合資源エネルギー
調査会・電源開発分科会への上程について」(2001年5月13日、日本生態学会中
国四国地区会総会決議)。
5.「上関原子力発電所(1,2号機)に係る環境影響評価書についての見解」
(2001年7月12日、日本生態学会中国四国地区会の見解)
6.「上関原子力発電所(1,2号機)の詳細調査に着手しないことを求める
決議」(2003年5月18日、日本生態学会中国四国地区会総会決議)
これらは当該発電所の建設予定地がきわめて生物多様性の高い貴重な場所であ
ることから保全を要望し、環境影響評価書が、法の定める環境影響評価の基本を
満たしておらず、それに基づいて開発着手を容認することはとうてい承諾できる
ものではないことをくりかえし指摘し、アセスメントのやり直しを求めてきたも
のである。また、環境影響評価が不十分な段階で、詳細調査という次の段階に入
ることはとうてい容認できない、という認識を表明したものである。
この見解に対する問い合わせ先は、以下の通り。
日本生態学会自然保護専門委員日本生態学会上関原子力発電所要望書アフターケ
ア委員長 安渓遊地(あんけい・ゆうじ)教授
〒753-8502 山口市桜畠3-2-1 山口県立大学
(引用終わり)
F 印刷物
1. 長島フィールドガイド(大型両面ポスター型、頒価100円)
2. 安渓遊地編『続・やまぐちは日本一 女たちの挑戦』(2006年1月弦書
房、定価1050円)
原発いらん!やまぐちネットワークの三浦翠氏、長島の自然を守る会の
高島美登里氏、安渓貴子アフターケア委員などによる講義を収録。