退屈な授業につける薬)学生の目を醒まさせるための燃料をくべる
2015/03/30
繰り返しだとおもうとたちまち退屈してしまう。これは私のビョーキです。(治療をめざして、定例の学科会議の招集と司会というお仕事を与えられていますが、付ける薬はなさそうなかんじ。)
幼いころ習ったバイオリン。練習で弾く曲のはじめに、毎回なにかチャラチャラリーンと付け加えて弾いては、直されていました。
いまでもなぜ野球が同じことを9回も繰り返すのか理解できていない私ですが、大学では、文部科学省の定めたとおり、授業を15回繰り返すということになります。
2009年秋のこと
基礎セミナーという大学一年生向けの授業を担当したときに、担当教員にシェアした気付きという古文書が、メールを検索していたらでてきました。
以下引用
安渓遊地です。後期はことしはじめての担当です。
とりまとめのM先生からのご指摘「退屈してしまう学生がいる」について、きわめて重大なこととかんがえますので、卑見を申し上げます。
学生が退屈するのは、生活経験が乏しいためもあって、考える材料が少なすぎるのではないでしょうか。そんな時は、途中で教員が燃料をくべてやらないと、空回りまたはエンストしがちです。
来年度もこの形式でいくなら、WHOの社会的健康まで進めて、「お肌つやつや、血液さらさら」を目指しがちな初期の気づきと討論を乗り越えていけるカリキュラムを模索したく思います。
そのためには、
話を1回きいたら、はじめは、2回の討論で丁寧にフォローして、後半では1回でその討論を終えるというやり方を提案します。
もちろん、Further readings にあたる展開教材を、ネット上で準備する必要もありましょう。
前回と前々回、私は睡眠時間の管理ができておらず、授業中に居眠りをしました(「ごめんなさい」と担当学生にはあやまりました)。
そのお詫びの気持ちをこめて、今回は、体調万全を期して、討論のための「燃料」を5分程度くべることを2回おこないました。1回目は「体調管理できない糖尿病患者の秘密=夫のDV を聞き取ることができた萩看護学校の生徒の力」という、私が萩で教えていたときのエピソードを紹介し、体と心と社会が直結しており、病因はインシュリンを分泌するランゲルハンス島だけにあるのではなく世界にあるのだという話をしました。そして、PDCAの大きなスパイラルは、そのように、体・心・社会と進むけれども、この基礎セミナーは心のところで終わるという話を二つのグループに共通でし、2回目は、「ゆっくり噛めば体が強くなる=唾液のパーオキシダーゼのすばらし解毒力」「笑えばナチュラルキラー細胞が増える。笑い顔をするだけで増える」「自分の体脂肪を減らしつつ第三世界の飢えている子ども達に1食20円を送るTableForTwoのとりくみ」などを、4-5人のグループの学生の学科の構成にあわせて適当に選んで話しました。
以下、学生のコメントの一部です。
◎前回のディスカッションの時と比べても生活習慣にあまり変化が無かったので、もう1度気合を入れなおして、自分のためにやっているんだという意識を持ち、自分のためにもっと頑張ります。安渓先生のお話はとてもためになったし、納得させられました。
←インフルで2回休んでおられたから、サービスにたくさんコメントします。「学ぶ」ことは「変わる」ことです(=生活がかわらないようなら、ほんとうは学んだとはいえません。頭でわかったつもりになっているだけ)。「いにしえの学者は己のためにし、今の学者は人のためにす」と孔子は嘆きました。自分の中に必然性がない学びは嘘だということでしょう。それなしにいきなり社会だ世界だという人にならないように。Clean your garden first. というところです。
◎心身ともに健康になることを目指すというあんけい先生のビジョンを聞いてようやく基礎セミの意味がわかってきた気がします。次の講義はしっかり聞いてディスカッションがんばりたいと思います!
←ディスカッションの時にはPDCAのスパイラルが、体・心・そして家庭・社会・世界へとつながって高まっていくんだという考えをお話ししましたが、WHOの定義では、身体・精神・社会のすべてが健康であることをもとめています。この基礎セミナーは心の健康で終わりますが、「世界がぜんたい幸福にならないうちは個人の幸福はあり得ない(宮沢賢治、農民芸術概論綱要、1926年)」ということばは、「幸福」の一部としての「健康」にもあてはまるはずです。
引用おわり
この時、私はまだ、spiritual な健康の追加が議論されていることに気付いていませんでした。
http://www1.mhlw.go.jp/houdou/1103/h0319-1_6.html
-- 公立大学法人 山口県立大学
地域共生授業担当
国際文化学部国際文化学科 学科長
教授 安渓遊地(あんけい・ゆうじ)
〒753-8502 山口市桜畠3丁目2番地1号
山口県立大学