くさまくら)パリのレストランでの「西洋の智慧」との接近遭遇 #Au_pied_de_fouet #Paris RT @tiniasobu
2013/11/13
20240204 タイトル修正 リンク切れ修正 写真を2番めの記事から借用に変更
くさまくら)パリで暮らした日々(1987-88)http://ankei.jp/yuji/?n=417
の補遺です。
巴里七区のラスパーユ大通りのアフリカ研究所に通っていたころ、「ムチの足下で」
という名前のレストランに二度ほど行きました。バカンスの時にはしまっているので、
観光客にはなかなか入りづらいのですが、辻静雄さんが激賞していたので、行ってみ
ました。
小さなお店で、いつも満員だから、食後の珈琲は席を立って飲むのです。庶民的で
やや荒っぽいサービスだけれど、われわれの手に届く範囲では最高のお味でした。ど
んぶりにつくったプリンをすくった「ひっくり返したプリン」も美味しかった。
以下で紹介するサイトに、「下町風家庭料理」と紹介されていますが、選び抜いた材料
だと思いました。
そこへ二度目に行った時のこと、隣にすわった男性と息子とおぼしい10歳ぐらいの
男の子。ニンジンシリシリー(沖縄語)に、酢油ソースをかけただけ、というシンプ
ルな前菜をたべながら、こんなことを子どもに言って聞かせているのが聞こえてきま
した。
「Ici, c’est le meilleur des meilleurs…(ここは、おいしい食堂のなかでも至
高の味だから)」
心して食べろ、と教えているのです。
「どんなものを食べているか言ってみたまえ。君がどんな人間であるかを言いあててみせよう。」『美味礼賛』を書いたブリア=サバランの言葉https://bontoku.com/meigen-bimiraisan
を思い起こしながら、巴里の食育の現場を見たような気がしました。
一人で食べている男性もいます。壁の棚には、ナプキンをキープするようになって
いて、それを使って食べています。私などは、使い捨ての紙ナプキンですから、これ
は、常連さんのようです。ちょっと尋ねてみました。
私「あのぉ、ちょっと訊いてもいいですか。その布ナプキンを使えるようになるに
はどのくらいの頻度で通わないといけないんでしょうか?」
男「お若いの、いい質問だ。この店のナプキン・キープは敷居の高いクラブでね、
なかなか権利がもらえないんだぜ」
私「あらぁ、そうなんですか!?」
男「そうとも。俺は何度仕事を変わったかしれないけれど、必ず昼飯はここで食え
るように、このレストランから遠くない所に職場を選んできたんだよ。まぁ、これが
西洋の智慧(la sagesse occidentale)というやつかな。ははは」
(末尾の つけたし も ごらんください)
http://www.kokubo-co.com/Pages/KB_parisguide_3.aspx から引用します。由緒ある老舗のようです。
「古いところでは、日本人向けの食品売り場といえるボンマルシェデパートの近く
のバビロン通りに安いビストロがあります。下町風伝統料理と言うのですかねえ。鶏
の砂肝のコンフィのサラダ、鶏のレバーのグリル、腎臓のマディラ酒炒め、塩漬け豚、
ワイン酢のチキンや鮭の衣焼きなど下町風家庭料理といえます。
この店が実はフランス革命の数年後の1793年に馬車の御者達の宿としてスター
トしているのです。すでに200年以上の歴史を持ちます。かってはアンドレ・ジッ
ドやアルベール・カミュも常連だったと言うことです。
ワイン込みでも50ユーロを超えません。
Au Pied de Fouet
45, rue de Babylone
Tel.01-47-05-12-27」(引用終わり)
上記はリンクぎれなので、以下も御覧ください。
https://ovninavi.com/au-pied-de-fouet/
Au Pied de Fouet|パリは左岸に息づく、昔懐かしの家庭的なお店。
安くてうまいパリ7区
2018-08-06
写真:レンズ豆のサラダ(手前左)と砂肝のコンフィのサラダ仕立て(手前右)。
ネオビストロと呼ばれる類の小洒落たお店が続々と増え、また値段も高騰し続ける昨今のパリ。昔ながらのレストランやビストロは確実に減ってきている。そんな状況のなか、7区という高級なイメージのある立地でありながら、家庭的で、そして今日では珍しい価格設定の貴重なお店が、こちら。
お昼のセットメニューはないけれど、単品のお値段が目を見張るほど安い。おすすめの前菜はレンズ豆のサラダ(3€)や、砂肝のコンフィのサラダ仕立て(3.4€)など。レンズ豆のサラダにかかっている、野菜の旨味と酸味が感じられるソースが絶妙で、豆の風味に立体感を出している。温かい砂肝のコンフィは噛む必要がないほど柔らかく、ボリュームもなかなかのもの。
メインの鶏レバーのソテー、自家製ピュレ添え(8.9€)は太鼓判もの。酸味の程よく効いた濃厚な赤ワインソースのおかげで、マイルドなレバーも最後まで飽きることなくいただける。それにしてもこのレバーもまた驚きの量で、付け合せのピュレと合わせて満腹は間違いなし。他にも、定番の牛ステーキ(10.9€)や、この日の日替わりのアンドゥイエット(11.9€)やウサギの背肉のロースト(12.2€)などに舌鼓を打つ常連さんの姿も見られた。
お腹に余力があるようなら、ブリーやサン・ネクテール、フレッシュなヤギのチーズなどチーズ類を取るか、もしくは、栗のピュレやタルト・タタン、クレーム・カラメルにガトー・ショコラなどのデザート類も欲張ってみたい。いずれも3€からで、すでに満腹だとしても無理をしてしまいそうなプチ・プライスだ。
こぢんまりした店内を彩る赤いギンガムチェックのテーブルクロス、そして気取りのないサービスに、どこか懐かしさを感じ、素朴な喜びを感じる。味、量、値段の3点どれを取っても満足のこのお店、4区、5区、6区にも店舗あり。(み)
(2番めの引用おわり)
フィールドワーカーの付け足し
取材をしたら、裏を取れ。これがフィールドワークの鉄則です。支払いをしながら、
念のため、お店のマダムにきいてみました。
私「さっきたべていたムッシューが、この店にナプキンを置けるようになるには、
ほとんど毎日通わなくちゃいけないって言ってたんですけれど、本当ですか?」
マダム「あーら、あなたすっかり担がれたのよ。毎日のように来ても紙ナプキンの
人もいれば、半年に一度くらいしか来なくっても、あずけている人もいるわよ。じゃ
あ、またね。」
あやうく 「西洋の智慧」をうのみにするところでした。
安渓遊地@生物文化多様性研究所