岩下明裕) 国境は泣いている 『 #北方領土 ・ #竹島 ・ #尖閣 、これが解決策』 (朝日新書)の著者の言葉 #AkihiroIwashita RT tiniasobu
2013/08/22
「島のことを書いて金をもうけたら、半額でいいから島に返すんだよ!」
http://ankei.jp/yuji/?n=294
でも紹介した岩下明裕さん(北大・スラブ研教授)がまたまた本を出しました。
北方領土・竹島・尖閣、これが解決策 (朝日新書) です(もうアマゾンに出てい
ます)。
本より先に、「著者の言葉」が届きましたので、著者の許可を得てご紹介しておき
ますね。
国境は泣いている
岩下明裕
2012年は領土問題で騒々しい1年となった。書店で平積みにされた新書や文庫。領
土本は売れない、という常識も破られた。だが中身は心許ない。にわか専門家が好き
勝手を言い、政策も世論もふらふらする。「境界研究」の看板で仕事をしている者が
黙っているわけにもいくまい。一般向け新書を、と思い立った。
難関が待ち受けていた。編集者は関心を示してくれたが、出版には二の足を踏む。
どこも領土問題の「看板」執筆者を抱え、テーマの競合を気にする。領土問題に対す
る私のスタンスを「社風」にあわないと考える社もあった。 気持ちが後ろ向きにな
り始めたとき、朝日新聞オピニオン欄「境界から考える」の特集(10月6日付)で私を
取材した記者の方が新書へ話をつないでくださった。当初、聞き書きでタッチ軽めの
本にする予定だったが、書き下ろして濃いめの内容となった。おかげで領土問題とは
何か、議論するときに欠落している視座は何かなど、掘り下げることもできた。皆さ
んが初めて知るような内容も盛り込んだ。ぱらぱらめくってもらえれば、新鮮な地図
が目に飛び込む。「知られざる国境」の現場へとお連れしよう。
本書で言いたかったことは、歴史論議は領土問題の解決に不毛だという点だが、読
者の関心はむしろ問題解決の具体策だろう。詳しくは本書に譲るが、隣国との間で国
益のバランスをはかる、国境近隣に暮らす住民たちの利益を守る、緊張をもたらしか
ねない境界地域を平和と友好のゾーンへと変えていく。信頼醸成プロセスのなかで国
境線やそれに伴う海域を大胆に組み替える。20年後の地域像を想像しながら、未来へ
向かって互いに折り合う道筋を一緒につくろう。
ところで朝日といえば、前著『北方領土問題』に大佛次郎論壇賞を下さった。受賞
記念の原稿が新聞に掲載された2006年12月13日は麻生太郎外相(当時)が国会で「面積
折半」「三島返還」を提案したとされる日だ。この日から、私のまわりで狂想曲が始
まる。論壇を賑わしたこれら騒動の顛末も本書に書き込んだ。本書は前著の続編でも
ある。
実は前著の刊行は2005年12月。論壇賞受賞までは1年のラグがある。騒動が大きくなっ
たのは、朝日新聞社が賞を与えたからだともいえる。それまで、いくつかの例外を除
き、この本は論壇からほぼ無視されていた。取り上げるのが「危険」だったのだろう
が、時代は変わった。いまや「三島返還」を元総理でさえ、テレビで言及する。
今回、北方領土、竹島、尖閣で様々な国境線引きの可能性を追究した本書の中身は、
前著を評価した朝日系列から出すことで、前著以上に「危険」と言われるかもしれな
い。
本当に本書は「危険」なのか? 我が国の論壇がどう反応するかが楽しみだ。前著は
「国賊」と言われた。今度は「売国奴」か。本書への皆さんの評価が、そのまま日本
の論壇の現実を映し出す鏡となる。
(引用終わり)
引用者
公立大学法人 山口県立大学
教授 安渓遊地(あんけい・ゆうじ)
〒753-8502 山口市桜畠3丁目2番地1号
山口県立大学国際文化学部