ダムはムダ)山口県営中山川ダムの場合@中国新聞
2013/02/26
http://www.chugoku-np.co.jp/News/Tn201302240006.html
ダム完成…一滴も利用されず
多額の税金をつぎ込んで完成しながら一滴も上水道事業に利用されなかったダムが
岩国市の山あいにある。同市周東町の山口県営中山川ダム。利水計画を進めた企業団
は採算が見込めず昨春解散。光、周南、岩国3市が権利を引き継いでいまも借金払い
を続ける。景気浮揚を旗印に再び脚光が当たる公共事業だが、重い負の遺産が地域に
横たわっている。
「ことしは水不足が深刻だったが、これで近隣市町に安定した水の供給ができる」。
中国地方が異常渇水に苦しんだ1994年秋。平井龍知事(当時)は中山川ダム完工
式でこうあいさつしてくす玉を割った。
流域の光市と玖珂郡周東、玖珂、熊毛郡熊毛、大和町(いずれも当時)に上水を供
給する多目的ダム。131億円もの事業費が投じられ、1市4町で組織する広域水道
企業団が約59億円を負担した。
上水道を確保して人口増を図り、地域発展にも結びつけたい―。県の後押しもあり、
地域は大きな「夢」を描いた。しかし、ダム建設途中でバブルは崩壊し、人口増など
の計画もあっさり頓挫した。
ダムは当初予定より8年遅れで完成したものの、上水施設や配管を整備するための
100億円を超す計画を実現する力は企業団にはなかった。事業を止めると補助金返
還を迫られるため、計画はたなざらしにされた。結局、企業団は元利合わせ約72億円
の事業費だけを背負い込み、2012年に解散した。
企業団を構成した1市4町は平成の大合併で光、岩国、周南3市になった。その3
市はダムの水利権を分割取得するのと引き換えに企業団の負債を継承。払い続ける借
金はいまも約18億円残る。
企業団解散後、周南市は光市の浄水場を経由して熊毛地区にダムの水を引く準備を
始めた。配水管工事も進めているが、整備にはさらに約58億円が必要な見通しだ。一
方、光、岩国両市では現時点で水利権を活用する予定はない。
甘い見込みで窮地に陥った公共事業のツケはいまも地域に重くのしかかる。
【写真説明】131億円もかけて完成しながら一滴も上水道として利用されないまま
企業団が解散した岩国市周東町の中山川ダム