留学生はいま)早朝のカラク市場レポート #seoul #korea #market RT @tiniasobu
2012/02/20
フィールドワークがどんどん進んでいる 李由紀さんからのレポートです。
安渓先生、アンニョンハシムニカ?
カラク市場二日目の状況をご報告します。
朝5時半に市場に到着し、前日約束していたお店へ向かいました。途中で水産や農産
の市場も通り過ぎたのですが、
いままで見てきたどの市場よりも大きく、商売人同士にぎやかに取引をしていました。
今回のインタビューは、牛肉の副産物の処理を担当しているアジョッシ、大きな胴体
を巧みに捌いているアジョッシの二人を
中心に行いました。
作業の邪魔にならないようなタイミングや内容に気をつけながらの質問、また一瞬も
見逃すことのできないナイフの技術に
感嘆しつつ長時間お世話になりました。
副産物の加工を30年以上担当し、この市場で出会った女性と結婚したアジョッシ
私「昨日少し聞きましたが、屠畜場がこのすぐ隣の建物にあったんですよね?」
アジョッシ「そう、去年まであったけど、いまは中部地方へ移転してしまった。とて
も不便になった。」
私「一日の生活リズムは?」
アジョッシ「夕方4~5時に退勤して、夜10時ごろ就寝。翌朝の4時半に起きる。家は
この近く。」
私「ソウル出身ですか?」
アジョッシ「慶尚北道出身で、ソウルに来て50年目になる。子供は息子と娘がひとり
ずついるよ。この50年でソウルもカラク市場もずいぶん変わった。」
アジョッシ「2018年に、このカラク市場全体がソウルの外へ移転するからもっと不便
になるよね。」
私「それは屠畜場のある中部への移転ですか?」
アジョッシ「屠畜場とは関係ないよ。あれに関しては、地域住民からの反対の声が大
きかったから。韓国人たちがここから出て行けと言ったから。」
私「韓国の畜産の特徴は何でしょうか?」
アジョッシ「捨てるところなく利用するところ。無駄なところがない。」
ここに運ばれてきた牛肉と豚肉は、まずロース・カルビ・四骨にわけられてから脂肪
除去を行い、最後に真空加工して販売されます。
真空加工の際に使用される機械を除けば、他はすべてが手作業です。
牛一頭300~500キロの枝肉から部分肉へと捌いていく作業を少人数で行うには、かな
りの労力が必要です。
今日写真を撮らせてもらったお店の中には、3ヶ月前まで公務員として働いていたア
ジョッシにも出会いました。
ソウル出身で東京の屠畜場で働いた経験もあるという畜産学科卒業のお兄さん(いわ
く「人生牛とともに」だそうです)
親の仕事を受け継いだと言う、豚肉担当10年目のお兄さんもいました。
つぎに、牛の枝肉をきれいな部分肉へと変身させていたアジョッシへインタビューを
しました。
私「うしろ脚を加工する際、いくつか大きさの異なるナイフを使い分けているんです
ね。」
アジョッシ「部位ごとに使うナイフは違う。骨の周りは小さいものを使って切り離し
ている。」
私「ナイフを取り扱うときに一番注意していることは?」
アジョッシ「使い方を決して間違えないこと。失敗すると怪我につながるから集中し
ないとね。あと、ヤスリもよく使う。」
私「ここはとても寒いですが、室内の気温とお肉の鮮度は関係しているのでしょうか?
」
アジョッシ「鮮度を維持するために、冬は暖房器具をつかわない。夏は冷房を入れる
よ。冬はきついね。」
ここでブルブル震えている私に気付いたのか、同業者のアジュンマ(作業中の男性人
に飲み物を作って渡している)へ
「この娘に温かいものを。」と代わりに声をかけてくださいました。
生気を取り戻した私「韓牛(日本でいう和牛)と普通の牛の違いはありますか?」
アジョッシ「韓牛の方が脂肪が多くて、取り扱いも難しいところ。」
このときアジョッシが捌いていたのがAA等級の韓牛で、特に良いお肉だそうです。
「食べるか?」と作業中に切れ端の生肉をすすめられて、お店で出される一人前以上
の量をいただきました。
部位別に「甘いだろう?」「さっきのより香ばしくないか?」と説明をしてもらいな
がらだったので、余計美味しく感じました。
しばらくアジョッシの作業をじっと見つめていたところで、家事を終わらせて出勤し
てきたアジュンマたちと再会しました。
「一緒にごはん食べに行こう」と誘っていただき、作業場のあるビル内の食堂へ行き
おかずいっぱいの朝定食をごちそうになりました。
なぜ屠畜現場に興味をもったのか、家族の話などいろいろと質問を受けました。
ソウルで訪れたマジャン市場、カラク市場訪問中に得た体験や貴重な写真をこれから
どのようなかたちでアウトプットするのか、
またインタビューに応じてくださった方の想いを汲んだ論文が書けるのか、その整理
をしていきたいです。
市場のアジョッシ、アジュンマから受け取ったメッセージを今度は私が、不器用でも
良いかたちのまま拡げて行きたいです。
この週末、ソウルはまた冷え込みました。
それでは、また。
アンニョンヒ ゲシプシオ。
李由紀