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2006/11/26) 西山正啓「水からの速達」上映会の記録

2006/11/27(月)



西山監督ゴミ問題を語る

 2006年11月26日、山口市仁保・原河内公民館で西山正啓監督にきていただいて

 東京都の日の出町の一般廃棄物処分場の引き起こした水汚染の問題を、住民へのちみつなインタビューで描いた作品「水からの速達」の76分バージョンを見ました(1993年作品)。オリジナルは、1時間47分だそうです。
 参加者は、約20人、鑑賞のあと、意見交換をしました。これは、その時交わされた意見の要約を、西山監督にチェックしてもらったものです。

質問と西山監督の言葉

――(参加者)現在、映画に出てきた日の出町の第二処分場はどうなっていますか。

西山 トラストをした人たちがんばっていたんですが、東京都知事が石原さんになって強制執行されてしまいました。
 基本的には、人目につかない遠いところに埋めるという発想があります。映画を作ったときから、ほとんど変わっていません。
 産廃よりもある意味では、一般廃棄物の方がやっかいです。スーパーに行って、あらゆるものを買うでしょう。それをもやした灰の中には、あらゆるものが入っているわけですから。
大企業では、完全にリサイクルしてゴミを出さないという世界の先端技術を確立しつつあります。中小企業ではそれができないから、産業廃棄物処分場がいるんです。水俣に産廃が必要なのは、北部九州に集まっている自動車産業のためでしょうね。
 8年前のダイオキシンが全国的な問題になったとき、手のひらを返したように厚生労働省がダイオキシンの毒性を認めましたね。このとき以来、ゴミの溶融炉の導入がはかられるようになるんですが、これは、じつは鉄を溶かす技術で、バブル崩壊後の鉄冷えへの対応としてできたという側面もありました。
 ダイオキシンを防ぐには、福岡県の飯塚市では、コールタールを用意しておいて、ゴミが足らないときは、それを入れ込んで燃やすということをしています。ダイオキシンが発生しない1200度を維持するために、重油や軽油までもやすという愚かなことをしています。
 この映画を作った翌年、僕はデンマークにいくんですけれど、デンマークでは、あらゆる場面でごみをださないようにしていって、最後のところで、どうしても仕方のないものは、エネルギーにして利用するんです。今は倒産していますが、新潟鉄鋼のプラントでそれがなされていました。ところが、そういう施設は、企業では導入されていても、日本ではそういうことをする社会的システムができていない。デンマークではそれを各家にお湯を引いて冷暖房につかう、という社会システムができています。どの家でもお湯が回ってきてそれが利用できるんです。それなのに、テレビで日本が宣伝しているのは、各部屋に一台おくような冷房機や暖房機のPRです。デンマークの社会システムにしていくというやり方とは、あまりにも違いますね。
灰が少ないというので最近たくさん導入されている溶融炉では、クローズドシステムというものが多いですね。システムの外に一切のものを流さないやり方です。コンクリートを打って、ゴミそのままでも、燃やして灰にしても、水を遮断しないといけません。そうしないと生命に危険を及ぼす毒物が外に出て行く。今の日本の技術ではその処理ができないんです。有害な重金属や化学物質などとれないものがたくさんあります。

 ――(質問)海まで届いた有毒物質は蓄積されますか?

 西山 拡散するでしょうけれど減りません。ほんとうに廃棄物にしない、という技術の追究がなされないことこそが問題です。
 この映画で登場する住民のみなさんが言っていることは、ゴミを出している人たちにゴミに対する関心が低いのに、結局はその人たちに大きな影響が帰ってくる、ということなんです。

 ――仁保のゴミ処分場問題について、ボーリング業者と話をしたら、とんでもない、認めてはいけません、と強く言ってくれました。やっぱり水の専門家はちゃんとみてますね。

 西山 わかっている人はわかっているんです。どんなにコンクリートでかためても、活断層があれば、地震が起きて施設が崩壊するということも当然考えられますから。

 ――仁保での経験ですが、地元では多くが見返りがあるからというだけの理由で賛成してしまう。日の出町ではどうなっているんでしょうか。地権者はもちろんのこと、行政も相当の見返りを要求するでしょうし。
 
 西山 迷惑料はもらっています。

 ――映画の中では、女性たちのパワーに感心したんですが。
 ――僕は、ああいう運動に男が女といっしょに出て行かないというのは、男のエゴだと思うな。企業をクビになるという心配なのかもしれませんが。

 ――西山さんが、10年ちょっと前に防府市で上映会をされたとき以来のいろいろなご縁を感じています。

 西山 みなさんも、映画を見られて10数年後、まさかご自分たちがこうした取り組みをするようになるとは思っておられなかったでしょう。

 ――わたしも、まったくこうした運動には無縁だとおもっていました。市会議員さんは、市民の意見をきちんと吸い上げてくださる方ばかりと思っていました。ところが、頼みにいくと、すうっといなくなる方、断固賛成の方などばかりなんです。市議会にも傍聴に行きましたが、まるで国会答弁みたいでした。映画の中には、坂本や平井などの山口市と同じ地名があり、母親たちが地団駄ふんでくやしがって取り組んでいることにすっごく共感しました。だって、ゴミだってみんな出しているじゃん、どっかに作らんといけんじゃん、というような反応に対して、どう対応したらいいか悩んでいます。でも、これからも自分の力や経験のあるなしにかかわらず参加していきたいです。

 西山 映画を作って13年たっても、見られたみなさんでこんなにいろんな話ができるということは、日本のゴミをめぐる社会の状況が根本的なところでちっとも変わっていないということなんです。それでも、自分で立ち上がってとりくめば、それがものすごい勉強になります。身の回りの状況もよく見えるようになってきます。日の出町の場合も、反対運動から勉強しはじめて、その後、反対派が町議会議員を2人出していますから。
 ごみの問題は、世の中のあらゆることにつながっていくんです。勉強会には深い意味があります。こどもたちにとっても、これほどいい勉強の機会はないですよ。たとえば、自分の出したゴミはどこへ行くんだろう。自分が飲んでいる水はどこからくるんだろう。お米はどこからくるんだろう、ということから始まるんです。それを通して公開質問状や議会の傍聴などへつながっていけば、世の中の流れがかわってきます。

 ――武蔵野市は、市役所の真ん前に焼却場を作ったとおっしゃいましたね。それはひとつの見識だと思いました。山奥では監視する人間がいないですから。

 ――山口市も10数年まえに焼却炉を大型化しようという動きで新しい施設ができたんです。

 ――(須藤議員) 山口では一部事務組合といって周辺町村といっしょに焼却場をつくりました(今は、一部事務組合は合併によって直営になっている)。リサイクルセンターとして、山口市だけでなく多く集めて燃やし続けるという施設を200億円ほどで作ったんです。古い施設はまだ使えるものだったけれど、もう使っていないです。いっぺん火を消すと大変コントロールが難しい。だから、ごみをたくさん集めないといけない。大きかろう、金もかかろうという悪循環になっています。ゴミを減らそうという根本的なとりくみが大切なわけです。

 西山 山口ではまだ溶融炉にしていないんですね。焼却炉の場合は、低温で燃やしたときに出るダイオキシンを含んだ細かいチリを電気集塵機かバグフィルターであつめるんですが、普通は、それをセメントで固めて最終処分場へ送っているんです。

 ――(須藤議員)残渣の灰は、周南市のコンビナートへ持って行ってセメントの材料にして、ふるって残った大きめのものは山口市の最終処分場へ持ち帰るようになっています。

 ――今は、セメントのリサイクルということが義務づけられるようになりましたが、砕いてバラスのように使えば、でそこに含まれているクロムなどの有害なものも、結局は環境に出てくるんです。
 
 ――放射性廃棄物を2000メートルほどの深くに埋めるというようなことができなですか。

 西山 ゴミは有害だから問題になるんです。無害なものなら、なにも心配することはないわけです。有害廃棄物をどうやって回収するか、という課題です。だからゴミ問題は、結局のところ水問題なんです。それが、僕がこの映画に「水からの速達」というタイトルをつけた理由なんです。
 
 ――いまの大量生産・大量消費・大量分別・大量廃棄。これでは解決はないですよね。

 ――こんど西山さんの1994年作品・デンマークのリサイクル社会の映画をみましょう。

 西山 反対のための反対運動しても仕方がないんです。ゴミを出さないためにどうしたらいいかを本当に根本から考えられるようになったらいいんですが。

 ――私が若い頃は、豆腐を飯ごうに入れて買いました。私は、ゴミの出る物を買わないし使わないです。自分の周りさえきれいになればいい。そういう生活ではいけない。いいもの、一生物を使っていくということが日本ではできた。防府市からきましたが、うちは、大きい道路を造ってあげようというような形で、うまく持ってきます。地権者は1割以下。その先の上流のきれいなところが採石場のなって、その石がとれなくなったら、そこがゴミ処分場になろうとしています。

 ――防府市の真尾(まなお)のところに利用頻度が低いはずなのにいい道路が計画されていることを知りました。3期工事が行われる予定で、極秘で処分場計画が進められているんです。野菜を運ぶ道路とされているのに、この10年で8トンから2トンに野菜が減っている。住民には何も知らせず、進めていくんです。

 ――仁保のわれわれは、計画の前の段階でわかったからつぶすことができた、と思う。行政の中の担当者の動向を把握しておくことが大事です。

 西山 計画ができていても、地元発で世論を盛り上げることができれば変えられます。あとは、やるかやらないかですね。

(拍手)
 


西山正啓の「10年遅い!でもまだ間に合う」シリーズとして、西山さんとの交流を記録していく第一回としたいとおもいます。
                           (記録 安渓遊地)





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