2006/12/19(火)
賛同団体のひとつとして、ふしの川清流の会も名前をつらねています。
2006年11月28日
山口県知事 ニ井関成様
松食い虫防除事業に関する要望書
11/24付御回答をどうもありがとうございました。2/23付要望書の御回答よりは的確な内容でありましたが、兵庫県とうりふたつの形・内容の御回答を出される貴課の姿勢には、大変疑問を感じます。山口県としての主体性のある御回答を、今後は要望致します。さて、重ねてですが、要望書を提出させて頂きます。
松枯れは、全てが松食い虫によるものではありません。枯れ松からザイセンチュウが発見されなかったケースは、全国で報告されています。また、ザイセンチュウを運ぶことで薬剤散布の駆除対象となっているマツノマダラカミキリは、近年激減しています。森林総合研究所が2001~04年に滋賀県で行った調査結果でも、トラップ捕獲されたカミキリムシ計1274個体中、マツノマダラカミキリは1匹(2001年捕獲)のみでした。(森林総合研究所報告・400号・2006年9月)。ちなみに滋賀県は、空散を行っていません。
今年度の林野庁林政審議会の参考資料中の、山口・兵庫県他6県で実施されている薬剤防除(空散)自然環境等影響調査の昨年度の結果には、マツノマダラカミキリが捕獲された記述はありませんでした。その自然環境等影響調査の山口県の資料編によると、マツノマダラカミキリは、無空散区の調査地ですら捕獲されていませんでした。この様な現状で県では、何のために空散が行われているのでしょうか。それに、空散の効果が示されたことは、今までにないというのにです。
そもそも1977年に成立した松食い虫防除法自体、空散効果が捏造されたデータによって審議されたものでした。この時点からすでに、空散の効果を証明するものはなかったのです。
更に、11/1に農薬空中散布反対全国ネットワークらによって、林野庁長官あてに提出された要望書に対する11/20の回答に、山口・島根・兵庫県他5県で実施されている、空散の効果調査について「報告が適切に実施されていない事例があった」とありました。
よって、林野庁が毎年の林政審議会で報告していた、“空散調査区の被害率は、非空散調査区の被害率より低い”という、空散の効果調査結果の信頼性がなくなりました。(資料添付)つまり現在でも、空散の効果を証明するものはないのです。松食い虫防除には、空散が効果的だと言える根拠がありません。それは、地上散布においても同様です。むしろ、複数の地域住民に健康被害が発生したり、化学物質過敏症の患者が苦しんだり、野鳥が死んだり、サルの奇形児出生率が高かったり(広島県宮島・1975年)、また、防除基準(200m)の20倍もの距離で薬剤の飛散が確認されたり、散布後1週間もの間、大気中から薬剤が検出されたりと、健康・生態系・環境への悪影響が各地で報告されています。
こうしたことが、空散が“皆殺し作戦”とか“テロ行為”などと称されている所以です。
駆除対象昆虫マツノマダラカミキリは殆どいなくて、効果も証明されておらず、健康・生態系・環境に悪影響ばかりある空散と地上散布を、多額の税金(今年度は約1億2千万年余予定)で行うという県内での愚挙は、一日でも早く中止して頂きたいです。松食い虫被害対策には、伐倒駆除と樹種転換で十分効果的に対応できます。また1996年に、山口・島根県境の旧田万川町と益田市の住民が、空散中止を求めて申請した公害調停で、1999年に公害等調整委員会が調停案を、市町・両県と林野庁に対して示しました。
ところが、公権的色彩の強いこの調停案を、この5つの行政全てが拒否し、当時マスコミ報道もされて大問題になりました。この調停案は、1997年の「森林病害虫等防除法の一部を改正する法律案に対する附帯決議」や事務連絡「特別防除の医療関係機関等への周知徹底について」の内容に添ったものであり、行政は当然行うべきことで、拒否自体考えられない対応です。
ですが、調停案は拒否したものの、その後益田市では空散が中止され、島根県でも空散に際しては、調停案の内容を一部取り入れた対応をしています。
林野庁では、今年度の松食い虫被害対策は、「周辺環境に配慮した、適切かつ確実な防除を推進するための樹幹注入剤の施用等、環境に配慮した松林保全対策」を重点の一つとし、従来の薬剤散布に係る補助金は一部を除き廃止され、税源移譲となりました。ちなみに島根県でも、空散に係る県の補助金は確実に削減されています。
しかしながら山口県では、旧田万川町をはじめ、県の空散面積も減少がないに等しく、税源移譲されても、県から市町村への補助金は削減傾向もありません。その上空散に際しての対応は、他県に比べて不十分な内容が多いことは、以下の要望項目の多さに表われています。
以上より、以下を必ず、来年度からの県と市町村の御対応として頂きたく、要望致します。必要な場合は、県・市町村の今回の議会や松食い虫協議会にかけられての、これら要望の実現を、よろしくお願い致します。
御多忙中恐縮ですが、御回答は文書で12月15日までに、お手数ですがよろしくお願い致します。
要望事項
1.県松食い虫対策協議会は、毎年の被害対策の内容を検討できるように定期的に開催すること。
2.空中・地上散布における、県の市町村への補助率を、従来の75%から当面、少なくとも50%に下げ、将来的に0%にすること。
3.1997年の「森林病害虫等防除法の一部を改正する法律案に対する附帯決議」の3.に添うよう、県・市町村の空中・地上散布の面積を確実に減少させ、近年中に散布は中止すること。また、そのための計画を具体的に策定すること。
4. 空散時の保安距離は、通常200m以上とること。病院・学校・水源等からは500m離すこと(1999年の公害等調整委員会の調停案より)。
5. 空散後5日間は、散布区域立入禁止と散布区域周辺の作業・行事・川遊び・野草取り等の自粛をすること。また、散布区域や周辺の入口・道路等に、以上の旨の看板を設置すること。(以上、1999年の公害等調整委員会の調停案参考)
6. 空散実施後は実施地区で、複数地点の飛散量・気中濃度・水質・土壌残留調査(調査日時・地点・風向など含む)と住民への健康被害アンケート調査を行うこと。ただし、アンケートの内容や回収方法などが、プライバシーの十分守られる形であること。また、これらの調査結果は、県のHPや市町村の広報等で公表すること。(以上、1999年の公害等調整委員会の調停案参考)
7. マツノマダラカミキリの空散前後の頭数と斃死頭数の調査を、空散実施地区すべてで行い、公表すること。
8. 現在の松食い虫防除の県のチラシは、松枯れの原因と空散の効果の表記に問題がある上、松枯れのしくみにスペースをとりすぎている。一方で、1997年事務連絡「特別防除の医療関係機関等への周知徹底について」に基づく内容が皆無。県のチラシを、市町村のチラシとして使用している自治体もあることから、県のチラシの先の2点の問題を改めた上、松枯れのしくみを縮小し、以下の内容を加えること。
a.「人によっては薬剤による影響の程度が異なることから、もし万が一、中毒症状が現れることがありましたら」の文。ただし、中毒症状が現れるのは、散布区内外を問わない。
b.中毒症状として最低でも、「頭痛・吐き気・腹痛・下痢・目やのどの痛み・アレルギーの悪化・発熱・だるいなど」が必要。
c.紹介医院と実施市町村担当課の連絡先。
d.要望5の前半部分。
e.県のチラシ裏面の④に、「散布中及び散布後しばらくは屋外に出ない」「散布当日は窓を開けない・洗濯や布団干しはしない」を加える。
9. 市町村が空散前に発行・行っている、チラシ・回覧や地域説明会などでも、上の7の内容が不十分か皆無の現状。よって、市町村で作成するチラシにも、この7の内容を加えて配布すること。また、回覧や地域説明会を行う市町村でも、来年度はこの作成したチラシか、上の7の県のチラシを配布して、空散実施に際しての注意事項等を地域住民等関係者に確実に伝えるよう、市町村に周知徹底させること。
10.住民から健康被害発生の申し出があった場合は、1997年の附帯決議の2に添って、県と市町村は対応すること。
11.要望4~9の対応を、市町村にも徹底させること。また、これらの対応が不可能な所では空散を止めるよう、県・市町村ともにすること。
12.地上散布や伐倒駆除の薬剤処理などをする時は、H15年農水省通知「住宅地等における農薬使用について」による、周辺住民への散布事前周知(注意事項含む)、散布中・後の散布区域立入禁止(看板設置等をする)などを行うこと。具体的には、「樹木等の病虫害防除に関する手引き」((社)緑の安全推進協会・H17年)にある対応をすること。
13.地上散布時に、有機農産物の生産圃場への薬剤汚染防止対策と、ポジティブリスト制度への対応を県・市町村ともにすること。
14.上の11・12の対応を市町村にも徹底させること。また、これらの対応が不可能な所では、地上散布や伐倒駆除の薬剤処理を止めるよう、県・市町村とにすること。
15.観光客をはじめ、空散実施地区外の人たちの危被害防止のため、空散域地図・空散日時と方法・使用薬剤・県や市町村発行のチラシにある注意事項を、県や市町村のHPで公開すること。市町村にもこれを徹底させること。
16.県や市町村の政策決定の場である協議会の内容と、公費を得て政策決定に関わる委員の氏名は隠蔽されるべきではない。委員を一般公募されたのなら、尚更である。県と地区の松食い虫協議会の議事録他と、同・協議会委員の名簿を、県と市町村のHPで公開すること。市町村にもこれを徹底させること。
17.現在の「山口県防除実施基準」は他県のものに比べて、安全対策・民意の反映他の点で、不十分な内容の箇所がある。よって、以下の様に改善すること。
① 「特別防除を行うことのできる森林~を次のように定める」において、「別紙のとおり(略)」の他に、「特別防除の実施につき、地域住民等関係者の理解と協力が得られる見込みのある森林。」を加える。
② 3「また、『山口県松食い虫~努めるものとする。」の文を、別添のaの文に変 更する。
③ 3(1)「野生動物」を「野生動植物」に変更する。また、「当該生息地から」の前に「悪影響を及ぼさないよう」を追加する。
④ 3(2)「薬剤が飛散・流入しないよう」を「薬剤の飛散・流入・ガス化による悪影響が生じないよう」と変更する。
⑤ 3(3)・(4)に“これら施設等との間隔を十分保持して実施”の内容を加える。
⑥ 4「特別防除~努める」の文を、別添のbの文に変更する。
⑦ 4(2)有機農産物の生産圃場への薬剤汚染防止対策と、ポジティブリスト制度への対応の内容を、具体的に加える。
⑧ 4(3)「薬剤が飛散・流入しないよう」を「薬剤の飛散・流入・ガス化による悪影響が生じないよう、十分」に変更する。
⑨ 4(4)“被覆他の被害防止措置を行う”の内容を加える。
⑩ 6(2)を、別添のcの文に変更する。
⑪ 6(3)「周囲の自然環境」の後に「及び生活環境」を加える。また、「関係者への原因説明」を「損害の調査、地域住民等関係者への原因説明、今後の被害防止策の検討」に変更する。
⑫ 要望6の追加
18.要望2.3による来年度の予算減少額を、今年度の予算額と比して具体的に示して下さい。
19.要望3の策定した計画と、要望6のアンケート調査内容と、要望7.8のチラシを示して下さい。
20.空散・地上散布による、有機農産物の生産圃場への薬剤汚染防止対策とポジティブリスト制度への対応の内容を、各々具体的に示して下さい。
21.11/2付要望書の7に関してされた、国からの質問内容とそれに対する県の回答内容を、各々具体的に示して下さい。
22.H13~17年度に伐倒駆除で使用された、乳剤・油剤・くん蒸剤の名前と使用量を示して下さい。
23.11/24付御回答・要望項目1について、地域住民から空散中止の申し出がある状況では、空散を「地域住民の理解と協力を得て実施」しているとは全く言えない。中止の申し出が1人でもあった場合、その地域では、空散中止に向けた対応を積極的にすること。
24.同・要望項目9については、通知に基づいた対応と全くなっていないので、要望9は再要望させて頂く。また、この件の市町への指導も、通知に基づいた認識をも ってされること。
―――通知には、「カ~防除に関心を有する団体等の代表」(反対派団体は、当然これに該当します。1997年の国会・附帯決議の2にも「関心を有する広範な関係者で構成される協議会」とあり、一般的に考えても、この項目に反対派団体が該当することは、簡単に御理解頂けることと思います。)の協議会への参加は「委員」として明記されています。
よって、通知には記されてない公募形式を県判断で採られたのは構いませんが、カの項目の者の委員としての扱いは、公募結果に左右されるべきものではありません。通知を、よく御覧になってらっしゃらないのではないでしょうか。また、「通知を踏まえ」、学識経験者などは「委員」とされているのに、同じ項目にある「関心を有する団体」が、何故「参考人」なのでしょうか。協議会に参加できて意見を述べても、「参考人」の扱いではその発言力に、「委員」とは差があるように思えます。
公募については「幅広い県民の意見を松食い虫政策に反映させることを目的」としながら、一方、反対派団体の参加については、通知に明記されているにも関わらず、「参考人」としての扱いに留めようとされています。
以上の様な県の御対応には、意図的な偏りがうかがえ、とても納得できるものではありません。「通知」が出されている以上、反対派団体の参加は「委員」として以外、あり得ません。行政は「通知」以上の対応をされることはあっても、「通知」より格下げした対応は、されるべきではありません。県民の意見を広く“公平に”、政策に反映させる姿勢を持って、「通知を踏まえた」御回答を重ねて要望致します。
要望団体
CS発信ちゅうごく 代表 平原千加子
地球環境を考え行動する市民ネットワーク・周南 代表 井上敏弘
萩空中散布を考える会 代表 藤井郁子
ふしの川清流の会 共同代表 水津弘美 岩田 進
山口みどりの会 代表 村田直美
連絡団体
山口みどりの会 代表 村田直美 〒740-0017 岩国市今津町4-16-7